「ねじれ議会」誕生でアメリカ経済は混乱する アメリカ第一主義への傾斜を一層強めるが…
移民キャラバンに関しては、トランプ大統領は「(キャラバンには)犯罪者や身元不明の中東出身者が含まれている」と指摘するなど、移民の流入による治安悪化への懸念をあおりつつ、根強い反移民感情に訴えかけた。2016年の大統領選挙の際に、イスラム国によるテロ懸念を強調すると同時に、メキシコからの移民を罵倒したことを想起させる論法だ。
分断の行き過ぎが共和党の内紛を招いたのも、2016年の再来といえるだろう。トランプ大統領は、出生地主義によるアメリカ籍の付与を、大統領権限で見直す方針を明らかにした。
トランプ大統領のほうが共和党の支持者に近い
これに即座に反対を明らかにしたのが、共和党のポール・ライアン下院議長である。共和党の主流派から異端とみなされたトランプ氏が、結局は大統領に当選したのが異例だとすれば、中間選挙の投票日直前に、下院のリーダーである下院議長と同じ党の大統領が正面から衝突するのも、明らかに異常な事態である。
トランプ大統領とライアン議長の衝突は、「トランプ化」する共和党の現実を映し出している。
トランプ政権の最初の2年間は、異端であったはずの大統領の政策を、共和党が受け入れていく過程だった。出生地主義で逆らったライアン議長は、今期限りでの議員引退を発表している。通商政策では、トランプ大統領が次々と繰り出す保護主義的な政策に対し、本来は自由貿易支持だったはずの共和党の議員たちは、正面から抵抗しようとはしなかった。財政政策でも、「小さな政府」を信奉してきたはずの共和党議会が、トランプ政権による財政赤字の拡大を容認してきた。
見逃せないのは、共和党の議員たちよりも、トランプ大統領のほうが、共和党の支持者の考え方に近い可能性があることだ。世論調査では、共和党支持者のほうが、民主党支持者よりも、自由貿易に懐疑的な傾向が強い。財政政策についても、財政赤字を気にする共和党支持者の割合は、以前より低下している。
共和党支持者の考え方には、トランプ政権が誕生する前から変化の気配があったことも興味深い。個別論でいえば、トランプ大統領が保護主義の矛先を向ける中国に関しても、その台頭に対する警戒感は、トランプ大統領が誕生する前から高まりつつあった。ややもすると、「トランプ大統領がアメリカを変質させている」という観点に偏りがちだが、「アメリカ政治・社会の潮流の変化こそがトランプ大統領を支えている」のである。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら