ZOZO前澤社長、「第2の創業期」の不安な船出 成長のカギ握るプライベートブランドが未達
それが10月4日に「お詫び」と書かれたメールが届き、「当初の予定より商品の生産に時間を要している」ため、発送が11月上旬に遅れる見通しになったという。遅延のお詫びとして、500円分のクーポンも送られてきた。
PB事業が計画未達となった要因の1つは、こうした発送遅延が相次いだことだ。生産工程上の問題が生じ、多数の商品が受注が入っても発送できない状態となっている。さらに、ビジネススーツは発売当初は注文が殺到したものの、数カ月先の納期を提示した影響で、その勢いも徐々に失速。前澤友作社長は決算説明会で「(生産委託した海外の)工場とのデータのやりとりがうまくいかないなどプロダクト面の不具合があったが、すべての遅延は年内に解消する予定」と釈明した。
ビジネススーツは通常3万9900円のところ、2万1900円のお試し価格で提供しており、ZOZOブランドの宣伝効果を狙った破格の値段設定でもあった。それに加えてお詫びクーポンを配布することで、PB事業黒字化のハードルはさらに高くなってしまう。同様の事態を防ぐため、今後は社内に立ち上げた実験用の生産ラインで商品製造のテストを徹底したうえで、大量生産につなげる計画だ。
アパレル各社はオーダー生産に注力
前澤社長は説明会で、近い将来、PBの全商品を対象に、ゾゾスーツでの計測なしでもぴったりのサイズを届けられるようにする見通しも明らかにした。ゾゾスーツで集めたデータなどを基に、身長や体重などの情報を入力すれば最適サイズを推測できる新技術を開発中という。
PB発売時は、ゾゾスーツの近未来的な仕様と、「自分にぴったりのサイズの服が自宅で注文したらすぐに届く」という斬新な販売手法が注目を集めた。ただ、オーダー生産は不良在庫を抱えるリスクが少ないため、アパレル各社も力を注いでいる。紳士服大手のコナカはベンチャー企業と協力し、全身をスマートフォンで4枚撮影すればサイズのデータを取得できる仕組みを確立。より簡易な採寸技術を導入する動きもある。ZOZOがゾゾスーツ発表から1年足らずで新たなサイズ提案の手法を発表した裏には、こうした競合の動きに対する焦りもありそうだ。
もっとも、採寸技術は手段にすぎない。PB拡大に向けては、商品の品質やデザインの差別化でどこまでZOZOブランドの顧客を増やせるかがカギとなる。前澤社長自身、「服自体に注目が集まらないといけないのに、どうしてもゾゾスーツにスポットが当たりがちだった」と語り、製品開発に注力する意向を改めて強調した。
「計測、パターン生成、製品製造とすべてを自分たちの力でやっていくのが、将来的に大きな強みとなる」(前澤社長)。中期計画では2020年度にPBの売上高を2000億円まで伸ばし、ゾゾタウン事業に次ぐ第2の収益柱とする目標を打ち出す。生産態勢の準備不足で出足はもくろみを外れたが、販売手法のインパクト以上に消費者を引きつける商品価値を打ち出せるかが、今後の成長を左右する。
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