電子部品業界、ポスト・スマホへの思惑 自動車へアクセル踏む電子部品業界

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ハイブリッド車が成長後押し

1960年代からワイパー用のモーターなどに磁石を供給してきたTDKは、自動車のエレクトロニクス化とともにコンデンサーやコイル、電源装置といった電子部品の取引を増やしてきた。

特にホンダ<7267.T>が「インサイト」を189万円の低価格で発売し、トヨタ自動車<7203.T>が対抗して3代目「プリウス」を先代より約30万円安い205万円で売り出した09年以降、ハイブリッド車の普及が加速。従来のガソリン車とともに、TDKの自動車向け電子部品事業の成長を後押しした。経済産業省によると、ガソリン車1台に占める電子部品のコスト比率は2割程度。これがハイブリッド車だと5割まで高まる。

世界の自動車需要が急減したリーマン危機直後も、TDKの自動車向け事業の売り上げは増加している。足元も堅調を維持し、13年3月期は過去最高を更新した。TDKの神谷守孝・自動車営業統括部長は「1台当たりに使われる電子材料、電子部品の価値は、特に電動化されている車に関し、今までとはケタが変わるくらいの数字になる」と話す。

ローム<6963.T>は4─9月期の売上高に占める自動車部門の比率が25.6%と、前年同期から2.0ポイント上昇した。同社の自動車向けLSI分野は国内向けが多く、今年9月には自動車向け半導体大手の米フリースケール・セミコンダクタの日本法人と協業することを発表。海外展開を急ぐ。

また、産業機器向けに量産する炭化ケイ素(SiC)製のパワー半導体は、従来のシリコン製半導体よりも消費電力が小さく、ハイブリッド車や電気自動車のインバーターに用れば、燃費向上や航続距離の延長につながる。今後の成長製品と位置付け、自動車メーカーへの採用に向け提案活動を進める。

ボッシュを目指す日本電産

問題は、納入先の自動車メーカーや自動車部品メーカーからのコスト削減圧力。半年や1年ごとに新機種が投入されるスマホ向けと異なり、商品サイクルが長い自動車向けの取引は安定が見込める。しかし、電子部品の搭載点数が増えたとしても、その分車体価格が上がる訳ではなく、原価低減活動が当たり前の自動車業界特有の値下げ要請が毎年あるという。「毎年、生産性が上がる分だけ還元してほしいと要求される」と、電子部品業界の関係者は話す。

1つの解として日本電産<6594.T>が出したのが、付加価値の引き上げ。主力製品であるモーターを単体で納めるのではなく、モーターを制御する電子制御装置(ECU)と組み合わせて供給する。

これまでも日本電産は、他社からECUを買ってモジュール化(複合化)することがあったが、直近ではホンダのECU子会社を買収することを決めた。モーター単体の供給に比べ、粗利率は2─3倍に膨らむ可能性があるという。

もともと日本電産は、ハードディスク駆動装置(HDD)向けの超小型モーターを得意としてきたが、パソコン市場の縮小を受けて事業構造を変えつつある。自動車や産業機械用のモーターに経営資源を振り向けている。「日本電産はどんどん変貌していく。いつまでも村田や京セラ<6971.T>、TDKと同じに見ないでほしい」と、永守重信社長は話す。「ボッシュのような会社を目指したい」──。

(久保信博、長田善行 編集:田巻一彦)

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