「雇用者報酬」と「企業収益」に水膨れ疑惑浮上 揺らぐGDPの信認
[東京 26日 ロイター] - 個人消費に影響を与える「雇用者報酬」と設備投資に関連のある「企業収益」に関し、データ水膨れの疑念が民間エコノミストから浮上している。統計データが実態と乖離したまま「一人歩き」すれば、合理的な政策判断ができず、誤った方向に対策が実行されかねないとの危惧も出ている。
消費と設備投資という国内総生産(GDP)を構成する大きな要素について、関連性の高い「雇用者報酬」と「企業収益」がともに過大積算されているということになれば、安倍晋三首相が目指すGDP600兆円へと近づいても、その信ぴょう性に「疑義」が生じかねない。
所得が突然高い伸びに
GDP統計で注記されている「雇用者報酬」が、今年初めから高い伸びを示してきた。政府関係者の間では、人手不足の影響で賃金が上昇してきた結果と前向きに評価する声があった一方、賃金上昇の割合に比べて民間消費の伸びが鈍いことに首をひねる関係者もいた。
この点に関連し、複数の民間エコノミストは、厚生労働省発表の毎月勤労統計の給与総額と総務省発表の労働力調査における就業者数が、ともに「高過ぎる」伸びを示し、それを元に算出するGDPベースの雇用者報酬を実態以上に押し上げている「疑い」を指摘している。
このうち、厚労省が作成している毎月勤労統計では、今年1月にサンプル企業の3分の1が変更された。旧サンプルでは25万8100円だった今年1月の給与(決まって支給する給与)が、新サンプルでは2086円高くなった。
その結果、給与総額の伸びが昨年までの1%未満から1-3%の伸びに高まり、GDPでの雇用者報酬を押し上げる一因となっている。
マクロ統計に詳しいエコノミストからは、今回のサンプル変更で、雇用・所得環境に関する実体把握が難しくなったとの声が相次いだ。