尾久と越中島、都会「秘境駅」人気上昇の必然

不動産業者が熱視線、その判断材料は何か

開業以降、需要が増え続けた東北本線は、近郊電車として運行される京浜東北線と長距離列車として利用される東北本線(高崎線・宇都宮線)の2つに分離した。このとき、電車線として分離したのが京浜東北線で、長距離用の路線とされたのが東北本線だった。

同じ路線から派生したこともあり、両者は東京駅―大宮駅間のほとんどで並走している。そんな両線だが、尾久駅付近だけは約1km線路が離れている。

悲運を背負った尾久駅

東北本線も京浜東北線も尾久駅付近を除けば同じ場所を走っているので、東北本線の最終電車が早くても大多数の利用者は不便を感じない。京浜東北線で代用できるからだ。唯一、尾久駅の利用者だけが、その恩恵にあずかれない。

そんな悲運を背負った尾久駅は、残念なことに行政からも冷遇される立場にある。尾久駅は東京都北区に所在しているが、駅名に採用されている“尾久”という地名は隣接する荒川区から拝借している。

尾久駅は、いわば北区と荒川区の緩衝地帯に位置する。そうした事情もあり、北区史でも荒川区史でも尾久駅についての記述は乏しい。というよりも、ほぼ黙殺されていると言ってもいい。

そんな尾久駅だから、1日の平均乗車人員も9487人(2017年度)と少ない。これは、東京23区に立地するJR駅ではワースト3位の数字になっている。

一般的には無名の尾久駅だが、鉄道ファンにとってはかなり有名な存在として知られている。尾久駅は尾久車両センターと隣接しており、駅ホームからも広大な操車場を見渡すことができる。尾久車両センターには、JR東日本が2017年に満を持して運行を開始したクルーズトレイン「トランスイート四季島」や寝台特急「カシオペア」のE26系客車が留置されている。また、お召列車として運用されるE655系電車も尾久車両センターに配置されており、ここで車体の洗車作業もされている。まさに、尾久駅は鉄道マニア垂涎の地でもある。

尾久車両センターでは「お召し列車」の清掃シーンを目撃することも(筆者撮影)

長らく不遇をかこった尾久駅だが、東京駅まで2駅という絶好のロケーションを不動産会社が見逃すはずがなかった。上野東京ラインの開業が決まると、尾久駅周辺はマンションの開発ラッシュが始まる。それは上野東京ライン開業後の2018年現在も変わらず、尾久駅前では数棟のマンションが新たに建設中だ。

尾久駅の特殊な立地は、駅前のマンション広告でも垣間見られる。通常、マンションの広告コピーには交通の利便性や地域の暮らしやすさをアピールする惹句が並ぶが、尾久駅前のマンションでは“尾久車両センターを見渡す立地”というキャッチコピーで売り出される。

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