瀬戸際に立つ建設・流通業界、供給過剰で減収が止まらない
引き金は、米国金融波乱が招いた信用収縮による新興マンション業者の相次ぐ破綻だった。これにより、工事代金の滞納や焦げ付きが発生。一方で、資材業者などの仕入れ先は現金での支払いを要求した。金融機関に駆け込んでも「手形が割れなくなった」(酒井社長)。資材費高騰も追い討ちをかけた。
マンション不況、金融危機など、ゼネコンの事業環境はますます厳しさを増している。「よい要素がほとんどない」(梅田貞夫・日本建設業団体連合会会長)状況だ。
関西地盤の大手ゼネコン首脳は「私はカタカナ業者(=新興デベロッパー)には手を出さない」と、工事量の確保だけを目的とした安易な受注に走らないことを公言する。ただ、地方でも入札制度改革が加速しており、工事受発注の透明性が高まる一方で、ゼネコン業者の利益率を押し下げている。今後も経営危機に直面する業者は出てくるであろう。
直面する最大の問題はパイの長期的な縮小だ。ピークの92年度に84兆円あった建設市場は07年度に、その6割にまで減った。野村総合研究所によると、15年度には半減の44兆円まで落ちる見通しという。
95年の建設産業政策大綱(旧建設省策定)によると、当時、適切とされた業者数は20万社。それに対して、現在でも、全国に50万社が存在している。今後の淘汰は必至だ。
日本より早く成熟期を迎えた欧州の建設会社が選んだ道は、海外市場への進出だった。現在では「欧州の建設大手の海外売上高比率は8~9割」(建設業界に詳しい、米田雅子・慶應義塾大学教授)まで上がっている。日本の建設会社も海外に進出するのは必然の選択だ。
ところが、日本のゼネコンの海外進出は現状、成功しているとはいえない。大手のうち所在地別セグメントを発表している鹿島と大林組では、この4年間、海外売上高比率は横ばい。鹿島の欧州は赤字が続いている。
大成建設は、今09年3月期の経常利益を当初の310億円から30億円の赤字に大幅な下方修正を行った。「海外案件で発注者側の理由により工事が遅れた。それに伴ってインフレや手順変更などで費用が増えた」(広報室)ためだ。現在「請負金額の増額などについて協議しているが、相当長期化しそう」(同)。
また、西松建設は、08年3月期に海外工事の損失を計上した。「新規に進出した中央アジアの国で、現地業者と納入についてのトラブルが発生したため」(経営企画部)という。
日本の建設業は、海外進出が遅れ、対応可能な人材が少ない。現地の制度や慣習にも不慣れで、トラブルも多い。だが、こうした問題の多くは、これまで海外に進出してきた日本企業のどこもが直面し、乗り越えてきた。建設業も“授業料”を払って、課題を一つひとつ解決していくしかない。
供給過剰の解消と海外事業の採算化。市場が先細る中、建設業は待ったなしの構造転換を迫られている。
(週刊東洋経済)
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