安倍首相を襲う「9.30沖縄決戦」という試練 辺野古移設問題で「オール沖縄」と対峙

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ただ、「オール沖縄」による玉城氏擁立までには曲折があった。知事候補を決める「調整会議」では当初、謝花(じゃはな)喜一郎副知事らの名前が挙がり、玉城氏を推す動きはなかった。しかし、翁長氏が死去する数日前に録音した音声の中で、同氏は後継者について、玉城氏と県内のスーパー経営者の呉屋守将(ごや・もりまさ)会長の名前を挙げていたことが判明。一転して両氏が擁立対象となり、呉屋氏が固辞したことで玉城氏に白羽の矢が立った。まさに翁長氏の遺言どおりの展開で、当然、選挙戦も「弔い合戦」を前面に出すことになる。

玉城氏は辺野古移設に反対する一方、自らを「保守」と位置付けている。2009年の衆院選では民主党候補として初当選し、現在4期目。小沢氏と行動を共にしたことで自由党所属となり、自由党幹事長・国対委員長として活躍し、地元ラジオのDJや沖縄市議だった経歴から、県内での知名度も高い。玉城氏は出馬表明会見で翁長氏の後継候補であることを強調し「イデオロギーではなくアイデンティティーだ」との“翁長イズム”をアピールした。

玉城陣営の最大の課題は、4年前に翁長氏を当選させた「オール沖縄」の結束だ。小沢氏が野党統一候補という枠組みを重視するのも「野党共闘」への不安からだ。最近の沖縄での衆参選挙や地方選挙での共闘は共産党主導の傾向が強まり、保守勢力の離反の動きも顕在化している。このため、県内の各種地方選挙では「オール沖縄」の敗北が続いており、今回知事選では陣営の再結集がキーポイントとなる。

小沢氏が主導する「野党共闘」について、立憲民主党幹部は「共産党が前面に出なければ勝てる」と語るが、共産党幹部も「保守から革新までの枠組みは大事にする」と応じる。陣営として「知事選が“保革の戦い”となることは避けたい」という思惑からだ。「オール沖縄」の有力者は「まとまらなければ、自民党が喜ぶだけ」と“反自民・反安倍政権”を旗印に野党をまとめて、知事選を戦う構えだ。

公明党は「貸し」を作って「安倍改憲」を牽制

これに対し自民党は公明党との共闘による組織戦で勝利を狙う。県内に6万票超の支持層を持つとされる公明党は前回知事選では自主投票に回り、同党支持票のかなりの部分が翁長氏に流れたとみられている。さらに、維新も独自候補を擁立したことが「10万票の大差」での翁長氏当選につながったとされる。その反省から今回、公明の全面支援と維新の協力をとりつけたことで自民党は「オール沖縄には負けない体制ができた」(県連幹部)と胸を張る。

今回の公明党の全面協力の背景には、自民党総裁選での首相の3選を前提に、「知事選で貸しを作ることで3選後の安倍政権への影響力を保つ」(公明幹部)との狙いがあるとされる。公明党は知事選投開票日の30日の公明党大会で山口那津男代表の続投を決める方針だが、山口氏は首相が進めようとしている憲法9条への自衛隊明記を軸とする安倍改憲には慎重姿勢を示しており、改憲での首相の独断専行を牽制したい思惑もちらつく。

そうした中、与党側が不安視するのは、知事選と自民党総裁選の期間が重なる点だ。辺野古移設は総裁選での争点にはならないが、自民党幹部も期間中は総裁選優先で知事選には手が回らないからだ。さらに、知事選投票日の直前に党内閣人事が予想されていることも、政府与党幹部の動きに影響しかねない。

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