《覆面座談会》揺れる保険業界--不払い問題で激変、翻弄される保険代理店のホンネ
甲氏 どちらにしても合併したところで、2年後、3年後には多くが破綻しますよ。合併して人数が増えると代理店を管理する必要が出てきますよね。でも、保険会社主導で合併したからといって、保険会社の担当者がそういう管理指導を行っているとは思えないし、成功するわけがない。たとえ担当者が管理指導を行ったとしても、代理店の経営者は基本的にはわがままですから、自分のことしか考えていない(笑)。
一生懸命やってきた代理店、頑張って貢献してきた代理店がむげにされている状況を、時代の流れだから仕方ないと切り捨てていくのはやり切れない。安易な吸収、合併ではなく、救済方法を真剣に考えてほしいものです。
--「お客様視線で考える」と損保各社が声をそろえて言っていますが、お客様にいちばん近い代理店で何か変化はありますか。
丙氏 現場やお客様の視線より、法令順守、業務停止にならないように、という思いのほうを強く感じます。たとえば自動車保険に自動付帯されていた特約の中には、お客様にとっては付いていたほうがいいような特約で、どうしてこれ付帯されなくなったんだろう?と思うものもあるんですよね。自動車保険に特約として傷害保険を付けられたほうが、契約が一度に済むからいいというお客様もいたんです。それぞれに契約を結ばないといけないなら面倒だから、自動車保険だけで傷害保険は契約しなくていいやというお客様も出てくる。そうなるとなかなか収入保険料の規模を大きくすることってできないと思いませんか?
それに一つの特約に対して意向確認書が必要になって、ある意味、サービスが低下してきているようにも感じるんです。一人のお客様にかける説明の時間が倍に増えたことで、それ以外のサービスが半分になった。以前なら1日6件訪問していたところが3件になった。これが徐々にボディブローのようにきいてくるんじゃないかと心配です。
乙氏 やはり、それを解決するのはITなんでしょうね。もっと手数料収入が高ければ人員を増やして、サポート係、営業チームなど役割を明確にしてさらによいサービスの提供ができるんですが……。現時点では、人を増やさず無理やり役割分担をしているので結構きつい状態ですよ。
甲氏 商品開発にしても、見切り発車が多くて現場のことを考えていない。準備に準備を重ねて新商品を出すべきと思うんですが、現場の声が反映されていなくて、くやしい思いをすることがありますよ。
--多様化されて煩雑な業務が増える中、IT化で投資をしなければならないのに手数料率は下がっているのが現状なんですね。
甲氏 そうなんですよ。収入保険料規模が前年を割ると手数料率が落ちる。たとえば、自動車保険はお客様が無事故で等級が上がっていくと割引になって保険料は安くなります。といって客が事故を起こせば、損害率が上がって手数料が下がる。既存契約を維持するだけでは手数料は減っていく。新規で契約を取らないと前年と同じ手数料は維持できない。