日本人はダークウェブの危難をわかってない いつ日本企業が狙われてもおかしくない

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そのためダークウェブは、違法取引やサイバー犯罪の温床となっている。ある調査によれば、ダークウェブ上に存在しているサイトの半数以上で何らかの違法取引が行われているという。たとえば薬物や武器、(盗まれた)クレジットカード番号やパスポートなどの売買だ。つい先日も、日本人の個人情報約2億件が中国語のダークウェブで販売されていたと報道された。こういった取引の決済手段として、(クレジットカードなどから素性が明らかになることを避けるために)仮想通貨が用いられている。

これだけ見るとダークウェブは非常に閉ざされた空間であり、なかなかアクセスできない世界であるように感じられる。しかし実は、中に足を踏み入れること自体はそれほど難しくはない。利用者の素性と通信経路を隠すことができる「Tor(トーア)」や「I2P(アイツーピー)」と呼ばれるソフトウエアを用いることで、誰でもアクセスは可能になる。

もともと方法さえわかっていれば、誰でもアクセス可能だったダークウェブ。そこに仮想通貨の認知が徐々に高まってきたことやサイバー犯罪がこれまで以上に大きく報じられるようになったことで、最近では初心者が興味本位でダークウェブの世界に入り始めているとも言われている。つまり、それだけダークウェブというものが多くの人に浸透し始めてきたということだ。

企業に与える影響は「情報漏洩」や「風評被害」がメイン

ダークウェブのインパクトはビジネスの世界においても無視できないものになりつつある。もはやどの企業も「ウチは関係ない」とは言い切れない状況にあると言ってもいい。

昨年、米国のサイバーセキュリティ関連企業が発表したデータによれば、2017年度版の米フォーチュン500にリストされている企業(日本からはトヨタ自動車やホンダ、日本郵政、NTTなどがランクイン)はすべて何らかの形でダークウェブ上で言及がなされていると言われている。特に数多く言及されているのがテクノロジー系企業であるというのは想像に難くないが、金融企業やメディア、航空会社、流通小売企業など、幅広い業界、業種で言及がなされている。

もちろんダークウェブ上で語られているからといって、それがそのまま何らかの危害に直結するわけではない。だが、ビジネスにインパクトを与える可能性のあるリスク要因であることは間違いない。ダークウェブ上で頻繁に語られているということは、それだけサイバー攻撃の標的にされる危険性も高いと考えられるし、情報漏洩や風評被害などの被害に発展する可能性も大いにある。

実際、ダークウェブ上では世界規模のサイバー攻撃に用いられるようなマルウェア(不正かつ有害な動作を行うウイルスなど)が非常に多くやり取りされている。こういったマルウェアは世界中のハッカーたちの手によって日々改良が重ねられ、その攻撃力も増している。ダークウェブがハッカーたちの共同の制作環境になっている。

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