シリア攻撃が示した米国の決定的な「異変」

攻撃は儀式化された劇のようでもあった

最近の対シリア戦でおそらく最も顕著なのは、米政府においてアサド大統領に対するより広範囲に及ぶ措置を強める議論がほとんどなされなかったようだ、ということである。化学兵器使用の文脈でよく口にされた「レッドライン」の徹底以外に、シリアの指導者を失脚させようという欲求は実際にはもうほとんど残っていない。とりわけ、イラクでサダム・フセインの失脚により数々の問題が残されてしまった後では。

こうした中、米政府の敵、特にロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、これらの対立を利用し、米国の裏をかくような新たな策をいろいろと試している。先週にはロシア政府がシリアの一部でGPS信号を遮断していたことが報告されている。それによって米国による無人機の活動に干渉していたとされる。

トランプ政権が事態を悪化させる可能性も

加えて、ロシアの情報戦活動も増強しており、西側諸国の分裂を加速させようとしている。ロシアは、実際に米国のミサイルを撃ち落とすよりは、「もう落とした」と言い切ることに決めたようで、すでに混乱状態にある国際議論が、より訳のわからないことになっている。

こうした傾向は、もっと前から起こっていても不思議ではなかった。そして、米国のどんな政権であれ、その対応には苦労させられたことだろう。トランプ政権は、オバマ政権が2年前に想像だにしなかった、より混沌とした、そして敵国がより自信を持ち創造力に富んだ世界に直面しているのだ。

それでも、トランプ政権の特異体質が事態をより悪化させる可能性がある、と結論づけないわけにはいかない。これはジョン・ケリー首席補佐官についてもっと当てはまるかもしれない。孤立を深めていると報告されているし、大統領はロバート・ミューラー特別検察官によるロシア調査で頭が一杯だからだ。

ある意味で、14日のシリア攻撃は、極めて儀式化された劇のようなものだった。レッドラインを徹底し、ロシアの脅迫に立ち向かうという、米国内におけるほとんど無血の軍事演習だ。どちらの側にも大規模な死傷者を出さずに対処できたということで、ある意味では安心させてくれたといえるだろう。だが、今後このような危機がもっと起こることが予想される。しかも、もっとずっと危険な危機が訪れるかもしれないのだ。

著者のピーター・アップス氏はロイターのグローバル問題のコラムニスト。このコラムは同氏個人の見解に基づいている。
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