輸入代理店の常識破る「登山家社長」の決断 登山用品の海外通販サイト人気に危機感
――ネット通販の普及によって専門店の必要性が薄れている、とはいえませんか。
私はそうは思いません。登山やクライミング、雪山を滑るバックカントリースキーなどは危険が伴うスポーツですから、用品選びが非常に大事です。お客さんに使い方や注意点をきちんと説明してあげることが必要で、登山用品を熟知した専門店の果たす役割が大きい。売りさえすればいい、という商品ではないのです。
また、全国各地の登山用品専門店によって、登山文化が継承されてきたという歴史があります。地方の専門店のおやじさんは大抵、根っからの山好きで、地元の自然を熟知している。用品の知識だけではなく、フィールドの情報、たとえば「あそこは道が崩れているから気をつけて」とか、「今の時期はこのルートを登ればキレイな花が咲いていますよ」とか、いろいろな情報を教えてくれます。専門店がなくなってしまったら、そうした登山文化も失われることになります。
「ネット専業」と取引しない理由
――ネット専業の小売業者とは取引しないポリシーだそうですね。
私はネットでの販売を否定しているわけではないのです。消費者にとってはネットでも買えたほうが便利。実際、今は当社の取引先の多くがネットでの販売にも力を入れています。ただ、店舗を持たない、ネット販売だけの会社とは取引していませんし、するつもりもありません。
――となると、アマゾンも取引の対象外?
そうです。取引先がアマゾンのサイト経由で販売しているケースはありますが、当社とアマゾンの間に直接の取引関係はありません。以前から何回も誘いをちょうだいしていますが、ずっとお断りしています。
――アマゾンの販売力に魅力を感じませんか。
たとえば、冬期の登山で使うピッケルがありますよね。いちばん売れるのはシャフトが真っすぐなタイプですが、50センチメートルから75センチメートルぐらいまで長さが何種類もあるのです。使う人の身長や用途によって最適なサイズが異なるからです。そういうことをきちんとわかって、お客さんに適切な用品説明のできる小売業者としか取引はできません。
この業界でもアマゾンとの取引によって、売り上げを大きく伸ばした会社があると聞きます。アマゾンの販売力を考えれば、確かに効率よく大量の商品を売りさばくことは可能でしょう。でも、売り上げのために会社の方針を曲げるのはおかしいでしょう。
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