川重が新幹線「N700S」開発から外された事情

JR東海との縁が切れた「あの一件」が尾を引く

川重兵庫工場で製造されるN700系の先頭車両の内部(撮影:ヒラオカスタジオ)

技術移転の問題を境に、JR東海は川重との取引を徐々に縮小する。N700系先行試作車の開発は2003年から始まっており川重も製造メンバーに加わっていたため、N700系量産車を失注するということはなかったが、N700系における川重のシェアは300系や700系と比べ大きく減った。

2009年度にJR東海が発注したN700系の車両は日立80両、日車160両に対し、川重はわずか16両。これを最後に川重によるJR東海向けN700系の製造は途絶えた。JR東海は2012年からN700系を発展させたN700Aを導入している。製造したのは日立と日車の2社だ。

JR東海向けの減少を他社向けでカバー

ただし川重にとって売り上げ面の痛手は小さかった。JR東海向けN700系の製造が減った代わりにJR西日本(西日本旅客鉄道)向けN700系の製造が増えたからだ。さらに2011年の九州新幹線(鹿児島ルート)全線開通を控え、JR九州(九州旅客鉄道)によるN700系の導入も決まった。製造現場ではN700系がひっきりなしに造られていたわけだ。

川重兵庫工場で製造された北陸新幹線W7系(撮影:尾形文繁)

現在、川重の新幹線ビジネスの軸足はJR東日本に移っている。東北新幹線の主力車両E5系は川重と日立が製造を担当し、秋田新幹線車両E6系の内外装デザインでは工業デザイナー・奧山清行氏と組んだ川重の提案が採用されている。また、JR東日本とJR西日本が導入している北陸新幹線E7系/W7系の主要製造メンバーでもある。

では、川重は今後も安泰なのだろうか。2016年度末時点における日本の新幹線の保有車両数を見てみよう。JR北海道(北海道旅客鉄道)40両、JR東日本1370両、JR東海2128両、JR西日本1123両、JR九州142両で計4803両。新幹線の車両は十数年程度で退役するので、新型車両への置き換えが車両メーカーにとってのビジネスチャンスとなる。

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