グーグル検索が露わにする人間のヤバイ本性 他人に言えない悩みが打ち込まれている

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

グーグル検索は、他人に言えない悩みや疑問が露わになる場所でもある。米国人は実売量をはるかに上回るコンドームの使用量を申告しており、さらにセックス回数自体も過大申告されがちであることが調査によって判明したという。

性に関する悩みの方向も男女で異なり、セックスレスについて検索するのは女性の方が多い一方、男性は「ギターのチューニング法、オムレツの焼き方、タイヤの交換法を調べるよりも頻繁に」アソコの増大術について調べているそうだ。政治から性事に至るまで、本書で繰り出される話題は幅広い。

何が有効なデータになるかわからないことの興味深さ

知られざる人の本性を明らかにし、通説や直感が覆される事例を軸に進む本書だが、その軸とは少し違う側面にも触れておきたい。少なくとも、単なる事例集ではない。トピックの一つひとつを読んでいると、データ分析そのものの魅力まで伝えたいという著者の意思が伝わってくるのだ。

数々の事例を通して意識させられるのは、何が有効なデータになるかわからないことの興味深さである。著者が引用している、統計学者ネイト・シルバーの調査はその好例だ。同調査は、共和党候補の予備選においてトランプの支持に最も相関性の高い、意外な指標の存在を示した。それは失業率でも銃所有率でも移民率でもなく、差別用語「ニガー(nigger)」の検索回数だった。なお、ヒップホップの歌詞に出てくる「ニガ(nigga)」とのスペルの違いはきちんと区別した上での結果である。

データ分析そのものを楽しんでいる著者の様子が伝わってくるのもいい。大の野球好きが昂じて始めた調査では、成人男性がどの球団の贔屓になるかは8歳の時の優勝チームに左右されやすいという傾向を見出す。分刻みの分析が持つ威力を語る時には、バンクーバー五輪のアイスホッケー決勝、カナダ対アメリカ(カナダ人の80%が見たとされる)放送時におけるエドモントン市の分ごとの水使用量グラフを出し、各ピリオド終了直後に「明らかにエドモントン中のトイレが流された」ことがわかるとアピールする。「これは私のお気に入りの研究だ」と随所で一言はさんでくることからも、純粋に好きでやってますという感じが出ていてほほえましい。

とはいえデータ分析の素晴らしさばかりを説くわけではない。その限界についても紙幅が割かれている。

証券市場の推移をデータで予測しようとする試みは、影響を及ぼす変数があまりに多すぎるためにうまくはいかないという。ビッグデータはあくまで補完的な立ち位置で、人間的な判断力はもちろん、アンケートなどの小規模なサーベイも組み合わせることが重要だと著者は語る。Facebookですら、大量のデータだけでなく、数百人規模の小さなアンケートを行って得たフィードバックを活かしているのだ。

次ページデータを活用する側の倫理も問われる
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事