春の京都観光、TVCMが混雑緩和に力を発揮か 混雑敬遠の動きの中「穴場」紹介で分散狙う

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バスよりキャパシティの大きな市営地下鉄の利用促進も、市バスの混雑に対するもう1つの策だ。交通局は3月17日から、現在は大人500円で発売しているバスの1日乗車券を600円に値上げする一方、地下鉄とバスが乗り放題のカードについては1200円から900円に値下げする。バスは市内の均一区間の運賃が大人230円のため、現行の1日乗車券はかなり割安。「安さから利用が増えており、地下鉄と乗り継いだほうが便利な所でもバスだけで行こうという人も多い」(交通局営業推進室)という。

今回の価格改定は「これまでが安すぎた」というバス1日乗車券の価格適正化とともに、観光客を地下鉄に誘導することでバスの混雑緩和を図りたいという狙いがある。交通局は今回の価格改定によって、市バスの利用者が1日当たり5500~9300人減少し、地下鉄は4600~7000人程度増加すると見込んでいるという。実際にどの程度混雑緩和効果があるかは未知数だが、「渋滞がなく速い地下鉄も利用して、スムーズに移動してもらいたい」と交通局の担当者は言う。

観光と文化を今後も維持するために

混雑する市バスから地下鉄への誘導という狙いは、今回の「そうだ 京都、行こう。」のキャンペーンに勧修寺が選ばれた点にも実は関連している。勧修寺は市営地下鉄東西線の小野駅から徒歩6分で、「鉄道でのアクセスの良さは1つの大きなポイント」(JR東海の担当者)。バスでもアクセス可能だが、こちらも一般の市バスではなく、一部高速道路を経由する京阪バスの「山科急行」利用だ。担当者は「ちょっと足を伸ばしてもらえばゆったり落ち着ける場所がまだまだある。アクセスも含め、そういった情報を丁寧に発信していきたい」と話す。

観光の混雑緩和に対する施策は交通関連だけではない。京都市の観光担当者は「場所・時間・時期の分散化が重要」といい、春・秋といった従来からの観光シーズンや著名な観光スポットに限らない「魅力の発信」が課題となっている。

今回のCMでは、最後に「私たちも、未来からお礼を言われるようなすてきな過去になりたいものです」というナレーションが流れる。混雑が課題となる中、これからも京都の観光と文化を維持し、後世に残していくためにできることは何か。人々を京都の旅へと誘う「そうだ 京都、行こう。」のCMにも、そういった観光関係者のメッセージの一端が現れているといえるだろう。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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