世界初「水素エネルギー列車」は成功するのか 独で運行開始へ、トヨタFCVとコンセプト同じ
日立、アルストムの2人が話す“クリーンな水素”とは、いったい何なのか。簡単に説明すれば、水素の利用時だけでなく、その製造過程でもCO2を排出しない水素を指す。
ヨーロッパには、水素を2つに分ける明確な基準がある。天然ガス改質によって水素を製造する時にはCO2が排出される。その排出量と比較し、製造時のCO2排出量が60%以上低いものを「グリーン水素」、それ以外を「グレー水素」と“色”で分けて呼ぶ。ざっくりとだが、「クリーンな水素=グリーン水素」と定義できる。
そして、この「グリーン水素」を製造するためには、風力や太陽光などの再生可能エネルギーを製造源とする必要がある。当然、風力発電や太陽光パネルは、その設備投資に莫大なコストがかかる。日立の正井COOが話す「開発・製造のための初期設備に多額の投資が必要」というのは、「グリーン水素の製造も考慮すれば、燃料電池列車の開発は大規模な投資事業になる」という意味だ。
アルストムも、今年末の運行開始時に「グリーン水素」の利用は実現できない。フリクセン氏は、水素の製造計画について次のように話した。
「初期段階として水素ステーションで電気分解し、水素を製造する。そして、プロジェクトの次の段階で風力発電からの製造を行う予定にある」
日本に燃料電池列車は走るか
日本でも、鉄道向けの燃料電池の開発は進められている。鉄道総合技術研究所が2001年から開始し、2005年に試作品が完成。2006年4月に同研究所のR291系列車に搭載し、構内試験線(長さ650m)で初の試験走行を行った。列車内のフロア上部に燃料電池、床下に水素タンク4本を搭載。結果、燃料電池から発生した電気だけで、重量33トンの車両をモーター2基で駆動させることに成功した。その後も試験は不定期で続けられ、昨年8月には最高時速45kmで走行した。
その実用化はいつかが興味深いが、同研究所は「弊所の役割は技術的な検証を行うこと。営業などの判断は各鉄道事業者による」と話す。
そして、燃料電池列車のメリットはCO2削減以外にもある。地上の電力供給設備の負担を軽減し、さらに、そのメンテナンスコストも減少できるのだ。メンテナンスコストの総額は、JR東日本の運行費用の20~30%に相当するともいわれる。地上の電力供給設備は、すでに60年以上も使用され続けている。設備更新のタイミングに合わせて燃料電池車の導入を検討するという選択も考えられる。
フリクセン氏は「まずはドイツで実績をつくる。その後、他のヨーロッパ諸国、さらに、アジア太平洋地区への導入も目指したい」と締めくくった。2018年末にドイツで運行開始する世界初の燃料電池列車。そして、イギリスでも導入に向けて同列車のテスト走行が開始されるという発表があった。その成否は、鉄道が新たな方向性を示せるかどうかの試金石といっても過言ではない。
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