「レイプ防止下着」が必要なインドの深刻事情 下着に付いたビデオカメラが犯人の顔を録画

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ニュース・サイトのインターナショナル・ビジネス・タイムズ(IBT)英国版(2014年6月27日付)によると、インドでは2014年にも、「レイプ防止パンツ」が開発されたことがあった。この時はジーンズで、理系の学校に通う女性2人が作ったものだった。襲われた時にボタンを押せば、近くの警察署に通報される仕組みだ。金額は60ペンス(約90円)足らずで、バッテリーが切れるまで3カ月ほど使用できる。

しかし当時、英国の慈善団体「エンド・バイオレンス・アゲンスト・ウィメン」(女性への暴力撲滅)のサラ・グリーン氏はIBT英国版に対し、レイプ防止ジーンズがレイプの問題の本質に取り組むものではなく、女性が被害に遭った場合は、レイプ防止ジーンズを履いていなかったからだ、と被害者の責任が問われかねない、と指摘していた。

2013年にも米国ニューヨークを拠点にする女性2人がレイプ防止下着を開発したことがあり、「世界初のレイプ防止パンティ」と報じられた。しかし当時の英紙テレグラフ(2013年11月7日付)でも見られたように、この下着はレイプ犯ではなく女性側に責任を押し付けるものだ、との批判が上がった。これを受けて開発した2人は、「被害者が悪いという考えを推奨するものではありません」との声明を発表するに至った。

カーストや貧困......インドならではの問題

また、「インドならでは」の問題もある。前述のIBT英国版は、カーストが低い女性が被害に遭った場合、警察は捜査に動かないと伝えている。インドでここまで女性への性的暴力が広がっている理由の1つは、警察が動かず、加害者が法的な処罰を受けないからだと言うのだ。

さらに、2014年に開発されたレイプ防止ジーンズの価格は日本円でわずか90円ほどと言っても、インドの国民大部分にとって、気軽に手が出せる金額ではないとIBTは指摘している。インドの英字経済紙ジ・エコノミック・タイムズによると、インドの国民平均年間所得(2016/2017年)は、約18万円だった。

デイリーメールは、今回のレイプ防止パンティを開発したクマリさんが、貧しい家庭の出身だと伝えている。そんな彼女が開発に要した金額は、約7600円。10代の女性が大金をはたいてどんな思いで開発したのかと考えると、インドの状況が1日でも早く改善するのを願うばかりだ。

(文:松丸さとみ)

「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

世界のニュースを独自の切り口で伝える週刊誌『ニューズウィーク日本版』は毎週火曜日発売、そのオフィシャルサイトである「ニューズウィーク日本版サイト」は毎日、国際ニュースとビジネス・カルチャー情報を発信している。CCCメディアハウスが運営。

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