プログラミング教育「必修化」に死角はないか 創造性を拡げるのはプログラミングではない

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子どもが将来なりたい職業として、システムエンジニアやプログラマー、ゲームクリエイター、アニメーターなどを挙げるようになってきました。子どもは創作と表現に貪欲です。でも、それができるようになるまでの敷居が高い、というのが現状ではないでしょうか。

その敷居を下げることが最も得意なのが、デジタルテクノロジーだと考えています。

では、子どもが楽しく創作するにはどうすればいいか。そもそも創造的な活動は楽しいものですが、押し付けられたり、言い付けられたりすると楽しくなくなります。そうならないためには、何かをつくりたくなる気持ちが芽吹き、育ち、継続するための「小さな成功体験」を積み重ねが大切です。やってみたくなる敷居の低さ、やり始めたら自分の作品をつくりたくなる衝動、できたら見せたくなる思い。何度やってもまたやりたくなる楽しさが無限に続けば、子どもの創造性も向上します。

これを実現するためには、直感的かつ簡単に作品を作れるデジタルツールが必要だと考えています。ただ、いざ子どもにスマートフォンやタブレット端末を与えるとなると、「まだ早すぎるのでは」「ネットやゲームばかりするのでは」などと思う方もいるでしょう。

でも本来、子どもはとってもクリエイティブです。誰もが生まれたときから創造性の塊だということは、子を持つ親ならご存じのはずです。YouTubeやソーシャルゲームの代わりに、子どもが自然に遊びたくなるデジタルツールがあれば、懸念は解消されるのではないでしょうか。

iPadを渡して遊ばせるだけ

筆者が2012年に発表した「paintone(ペイントーン)」というアプリでは、子どもでも指と声だけで簡単に音の鳴る絵が作れます。自分で描いた絵に音を録音して、絵をタッチすると音が鳴るという仕組みです。

iPadでこのアプリを体験した子どもは、マニュアルやリファレンスを見もせず何度も試行錯誤を繰り返し、驚くべきのみ込みの早さで次々と作品を生み出します。2歳児でさえ自在に使いこなし、ツールを我が物としていきます。さらに、YouTubeやゲームに熱中する頻度も激減します。

筆者の娘が2歳で作った作品は、色とりどりに描かれた絵を押すと、娘の声が聞こえるというものでした。娘が5歳になると、桃太郎のおとぎ話をアプリで表現できるようになりました。いずれの作品もiPadを渡して遊ばせただけで、何か特別に教えたわけではありません。粘土をこねているうちに作品ができあがるように、遊んでいるうちに自然と表現できたのです。

しかし、このように創造性にあふれていたはずの子どもも、大人になると創造性を失いがちです。新しく何かをつくり出す楽しさを子どもの頃から体験させ続ければ、それが避けられるかもしれません。

そんな折、日本では2020年から小学校の授業においてプログラミング教育が必修化されます。ところが、現状のプログラミング教育は逆効果かもしれません。

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