新幹線「重大インシデント」はなぜ起きたのか 台車に亀裂発見、考えられる原因は?

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だが、仮にそうであれば、2010年のトラブルのように潤滑油が焼けてもっと白煙が出た可能性が高く、台車の亀裂発生などという異常な力が働く前に車輪の固着などが起きていたはずだ。そうなれば、台車とモーターの異常として検知され、運転台や運転指令にはもっと早く異常が伝わっていたに違いない。

一方、2013年には旧型の700系(C50編成)10号車のギアボックス内の軸受けが損傷し、「コロ」が脱落して歯車やギアボックスを破壊、ギアがむき出しになるというトラブルが発生している。

こうした場合も、ショックで台車枠に亀裂が入るという可能性は少ない。車軸に異常が起きても、台車との間にはバネを介しているからだ。だが、仮にギアボックスの一部など、鋼鉄製の質量の大きな部品が「飛んで」台車に当たり、その衝撃で台車に亀裂を生じたとしたらどうだろう。つまり、2013年の700系の故障のようなギアボックス外部に至る破壊が発生して、壊れた部分が当たって台車枠を損傷したという可能性だ。

だが今回は、13号車のギアボックスに関しては油漏れはあるが、外側に大きな破片を飛ばすような損傷はないようだ。当初は7・8号車で異臭がしたということから、そちらのギアボックスなどが壊れて飛散したことも考えられそうだが、東京行きの「のぞみ34号」は16号車が先頭なので、7・8号車の壊れた部品が13号車の台車に当たるという可能性はない。

異物との衝突はありうるか

そこで考えられるのが(3)である。台車とギアボックスの双方に異常が発生したということは、その箇所に質量の大きな異物が衝突して、台車とギアボックスを同時に損傷したという可能性だ。

しかし、バラスト(線路の敷石)が衝突したぐらいで台車が壊れることは通常はなく、鋼鉄製などの異物が当たったとか、あるいは車両の床下機器の一部が落下して台車とギアボックスを損傷したという可能性を考えなくてはならない。可能性としては低そうだが、まったくゼロではない。13・14号車における「うなり音」については、ギアボックス内の潤滑油が漏れて減ることで、内部抵抗が増加した音ということかもしれない。

いずれにしても、一夜明けた12日から東海道・山陽新幹線は平常ダイヤで運転されている。故障した編成についての検証や原因究明は今後進展するだろう。台車枠に亀裂が入るという事態は深刻であり、徹底的な原因究明と情報公開を望みたい。

冷泉 彰彦 作家

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れいぜい あきひこ

1959年生まれ。東京大学文学部卒。米国在住。『アメリカは本当に「貧困大国」なのか』など著書多数。近著に『「上から目線」の時代』(講談社現代新書)。

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