吉田鋼太郎、強い印象を残す演技力の源泉 ナイスミドルは年下から学んでいる

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『アテネのタイモン』彩の国さいたま芸術劇場大ホール。2017年12月15日(金)~29日(金)。演出:吉田鋼太郎/出演:吉田鋼太郎、藤原竜也、柿澤勇人、横田栄司ほか

舞台俳優として知る人ぞ知る存在だった吉田をテレビドラマで見かけるようになって、まだ数年しか経っていないのが信じられない。「ギルティ 悪魔と契約した女」の権力欲の強い警視、「カラマーゾフの兄弟」の暴君な父、「半沢直樹」での理解ある上司、「MOZU」の暴力的な男……立て続けに出演したすべての作品で強烈なインパクトを残した。

なかでも、NHK朝ドラ「花子とアン」での九州の石炭王・嘉納伝助は、ともすればただの悪者になりかねないところを、悲哀に満ちた無骨な男という人間味あるキャラクターに仕上げ、惚れ惚れする男っぷりに世の女性たちは色めき、“伝助萌え”なる言葉まで生まれた。

「トットてれび」で演じた森繁久彌役も忘れられない。「吉田さんがいいんじゃない。スケベそうだから(笑)」と、黒柳徹子の推薦により決まったという。たしかに通りすがりに女優のお尻を触ったり、徹子に会うたび「1回どう?」と誘うお茶目な森繁さんを、品よく演じられる俳優はそうはいないだろう。

「森繁さんって不思議な方なんです。二枚目というわけではないのに、大スターでチャーミングで、演技も達者で。石原裕次郎でも勝新太郎でもない。共感する部分も多く、スケベなところも一緒ですし(笑)。将来、あんなふうになれたらいいなって思いますね」

「年下から学ぶことは多い」

吉田 鋼太郎(よしだ こうたろう)/1959年1月14日生まれ。東京都出身。174cm・68kg。上智大学文学部ドイツ文学科在学中、シェイクスピア研究会公演で初舞台。大学中退後、劇団四季、シェイクスピア・シアター、東京壱組を経て、97年劇団AUNを結成。シェイクスピアやギリシャ悲劇など数々の舞台に出演、演出も手掛ける。2016年さいたま芸術劇場主宰「彩の国シェイクスピア・シリーズ」2代目芸術監督に就任。2001年紀伊國屋演劇賞個人賞、14年芸術選奨演劇部門文部科学大臣賞受賞。主な舞台は『タイタス・アンドロニカス』『オセロー』『リタルダンド』『アントニーとクレオパトラ』『ヘンリー四世』(いずれも主演)。主な映画は『シュアリー・サムデイ』(監督:小栗旬)、『アンフェアthe end』(佐藤嗣麻子)、『三度目の殺人』(是枝裕和)、『ミックス。』(石川淳一)。主なテレビは「ギルティ 悪魔と契約した女」(関西テレビ)、「カラマーゾフの兄弟」(フジテレビ)、「刑事7人」(テレビ朝日)、「東京センチメンタル」(テレビ東京)、「ゆとりですがなにか」(日本テレビ)、「花子とアン」「トットてれび」「真田丸」(NHK)ほか。

吉田といえば、小栗旬や藤原竜也など若手俳優からの信頼も厚い。同じ芝居を作る仲間として仲良くなったという。「年下から学ぶことは多い」と吉田。

「彼らからは学ぶことだらけです。年をとると、どんどん嫌な人間になってくるし、頑固になってくるし、人の話は聞かなくなってくるし、どんどん、どんどん欠点がさらけ出されていく……。

彼らを見ていると、ストイックだし、ちゃんと人と付き合うし、無礼じゃないし……。彼らを見て『自分もちゃんとしなきゃいけない』って。逆に同年代と付き合うのはイヤですね。なんの勉強にもならない。どこが痛いの、どこが悪いのばかりで」

舞台から映像に活躍の場を拡げたのも彼らの後押しによるものだ。若手俳優からの刺激が吉田をさらに進化させる。最近ではNHK「所さん、大変ですよ!」での臨場感あふれるナレーションも好評だ。なんと初見でナレーションをつけているというから驚く。「収録前に『今日のはどうでした?』って聞かれて、『台本読んでないからわからない』って言ったら、読んでないことバレちゃったんだよ」と、悪戯っ子のように笑った。

今、一番やりたいことは「時代劇」。

「テレビの時代劇が少なくなってきているので、僕らの世代がやらなくてはと。僕らも(北大路)欣也さんたちを見て憧れていた世代なので。僕は戦国時代、とくに武田信玄が好きだから、信玄をやりたいですね」

俳優・吉田鋼太郎がまたひとつ新たな扉を開く日は近い。

(取材・文/桧山珠美 写真/山﨑祥和)

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