アキバベンチャーがシャープと手を組むワケ 日本のモノづくりが復活する道筋になるかも

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tsumugにとっても、シャープの量産アクセラレーションプログラムは渡りに舟だった。

tsumugは不動産会社勤務の経験があり、孫泰蔵氏のスタートアップ投資会社「MOVIDA」で働いていた牧田氏が「物理的な鍵を無くしたい」と考えて立ち上げたベンチャー企業。プロトタイプまではDMM.make AKIBAで開発してきたが、量産の段階で壁にぶち当たった。受託生産の工場に量産を持ちかけても、信用力がないため相手にされず、途方に暮れた。

この問題についてはDMM.make AKIBA側も把握しており、シャープに働き掛けを行った。そして、量産アクセラレーションプログラムが始まったわけである。

日本のモノづくりが復活する道筋

当初、シャープの技術者たちはtsumugが持ち込んだ企画に半信半疑だったが、牧田氏の熱意に押されて本気になり、ついに「TiNK」の量産にこぎつけたという。

リアルなモノづくりを伴うIoTは、事業化の段階で量産のノウハウや一定規模の生産設備が必要になる。スタートアップが優れたアイデアを持っていても、事業化にたどり着けない可能性は少なくない。ノウハウや設備を持たないスタートアップにとって大企業とのタイアップは事業化の壁を乗り越える起爆剤になる。

一方の大企業は組織の肥大化、官僚化が進み、斬新なアイデアが生み出せない。特許や先端の生産設備が宝の持ち腐れになっているケースも多い。熱意に溢れたスタートアップと接することで、現場が活性化する可能性もある。IoTが実用段階に入るこのタイミングで、スタートアップと大企業が本気でコラボすれば、日本のモノづくりが復活する道筋を描けるかもしれない。

大西 康之 ジャーナリスト

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おおにし やすゆき / Yasuyuki Onishi

1965年生まれ。愛知県出身。1988年早稲田大学法学部卒業、日本経済新聞社入社。欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集委員、日経ビジネス編集委員などを経て2016年4月に独立。著書に『稲盛和夫 最後の闘い JAL再生にかけた経営者人生』『ファースト・ペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』(以上、日本経済新聞出版)、『三洋電機 井植敏の告白』『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』(以上、日経BP)、『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』(新潮社)、『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』などがある。

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