ヤマトとEC業者、値上げで迎える蜜月の終焉 働き方改革で初の赤字転落、復活果たせるか

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芝崎専務はアマゾンとの運賃交渉について明言を避けたが、交渉が進んでいることは示唆した(記者撮影)。

焦点のアマゾンとの運賃交渉は進んでいるのか。同社はヤマトの宅配便取り扱い個数の1~2割を占めるとされる。芝崎専務は「(アマゾンにも)働き方改革にご協力をいただくということで、この先、柔軟にいろんなことが合意されていく」として明言を避けた。

国内証券アナリストは「現状で1個当たり平均280円前後という運賃水準を、400円強へと約4割引き上げる方向のようだ」と話す。

採算重視で荷物量も抑制へ

ヤマトの宅配便をめぐる戦略は端的にいえば、こうなる。2017~2018年度は単価を引き上げることに重きを置き、数量も抑制する。単価が改善し、輸送力増強が完了する2019年度から数量を増やし、収益の最大化を狙う、といったものだ。

運賃引き上げと並ぶ戦略の柱、大口顧客に対する荷物の受け入れ量規制(総量規制)はどの程度進んだのか。

5月に公表した2017年度期初の段階では宅配便個数を前年度よりも8200万個(前期比4.4%)減らす計画だった。これが、第1四半期決算時点では、年間の削減計画量は3600万個(同2%減)に後退する。

「値上げをしても使いたいという顧客が多かった」(柴崎専務)からだ。交渉の進捗を受け、第2四半期決算では年間で500万個を削減し、4100万個(同2.2%減)とした。

運賃引き上げや他社への契約切り替えのタイミングは大口顧客ごとにまちまちだが、「収益面では下期に効果が出始める」(柴崎専務)という見通しだ。

スタートトゥデイ運営の「ゾゾタウン」など通販大手の当日配達の取りやめや総量規制で、外部委託費も削減する。2017年度の宅配便1個当たりの単価は590円と、前期比31円(同5.5%)増の大幅な改善を見込む。

2017年度の通期業績予想は、上期に宅配便の配達個数が増えた分を反映させて、売上高を1兆4700億円から1兆5020億円(前期比2.4%増)に上方修正した。

一方、営業利益は期初予想の250億円(前期比28.3%減)を据置く。サービス残業問題発覚前の2015年度には685億円の営業利益が出ていたことからすれば、4割以下の水準だ。

大口顧客向けの運賃引き上げが通年で浸透するのは2018年度となるが、荷物量の抑制を継続させるため、業績の改善にはならない。2018年度には2016年度比で宅配便取り扱個い数を約1億個(5.2%)削減する。

ヤマトは荷物量を抑制している間に輸送力を引き上げ、ネット通販拡大による需要増に対応する考えだ。ヤマトが9月に発表した2019年度までの中期経営計画には、午後から夜間にかけての配達に特化したドライバー制度を新設。この新制度の中で、2019年までに1万人規模の人員を採用する計画だ。

ヤマトHDの山内雅喜社長は「2018年度以降は収益力を回復させ、再び成長軌道に乗せる」と意気込む。そして2019年度は宅配便取り扱い個数を引き上げ、過去最高となる営業利益720億円を目標に掲げる。

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