911カレラと競い合う「AMG GT」新仕様の実力 メルセデスの最高峰スポーツは何がスゴいか

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通常モデルよりも大幅に運転席が後方に配置されている(写真:Mercedes-Benz提供)

AMG GTは、運動性能に最も適した重量バランス位置にドライバーを配置することを狙い、通常モデルよりも大幅に運転席が後方に配置されている。

人に例えると足が長く見える効果も発揮するそのロングノーズパッケージは、曲がる行為に対して感覚上で若干ノソッと動くデメリットがある。それを乗りこなし重量バランスのよさを生かしてプロドライバーは戦うが、一般道で誰もがそれを容易にコントロールできるようにリア操舵が「C」についた。この効果は絶大で、ベースや「S」以上に素直にスムーズに気持ちよく曲がるようになり、特に連続するカーブを直感的なハンドル操作で理想の旋回姿勢を保ちながら曲がっていける。

アクセルの踏み込み加減に応じた非日常感の演出まで自由自在(写真:Mercedes-Benz提供)

スポーツカー好きなら外せない

加えてスポーツカーに大事な刺激の源になる加速力や排気音を生み出すエンジンも強化。その味付けは、所有しているうちに慣れてしまうことがなく、それでいて過敏で過剰に感じない絶妙な仕上がり。「S」より47馬力増強した最大出力557馬力・最大トルク680Nmのエンジンは、アクセルの加減に応じた非日常感の演出まで自由自在。もちろんサーキットを走っても十分すぎる速さを生み出している。懸念するなら、始動音が激しく、閑静な住宅街での深夜早朝での使用には気を使いそうなことくらい。

これらスポーツモデルとしての高い仕上がりに加えて、実は乗り心地もいい。ワインディングを含めた荒れた道での安定した高いグリップを求めて、タイヤを的確に優しく路面に設置させ続けるためのしなやかに動く足回りが、同時に乗員にも優しさを提供してくれていると考えると理解しやすいだろう。

もちろんAMG GTが持つゴルフバッグが2個を楽に積める積載力や、2シーターモデルながらシート後方にスペースを設けて休めるほどのシートリクライニングを可能にするなどの実用性も健在だ。このような魅力を備えた「C」、ハイパフォーマンスカー好き、スポーツカー好きなら気に留めておきたい1台だ。

五味 康隆 モータージャーナリスト

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ごみ やすたか / Yasutaka Gomi

自転車のトライアル競技で世界選手権に出場し、4輪レースへ転向。全日本F3選手権に4年間参戦した後、モータージャーナリストとしての執筆活動を開始。高い運転技術に裏付けされた評論と、表現のわかりやすさには定評がある。「持続可能な楽しく安全な交通社会への貢献」をモットーとし、積極的に各種安全運転スクールにおける講師を務めるなど、執筆活動を超えた分野にもかかわる。また、環境分野への取り組みにも力を入れており、自身で電気自動車やハイブリッド車も所有。https://www.facebook.com/yasutakagomi53

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