DVシェルターへの不満を訴える女性は贅沢か 職員も「牢獄のような管理」と葛藤
「カウンセラーには、夫の行動はDVだと言われるばかり。DVは治りませんから離婚したほうがいいと、とにかく離婚をすすめられました」
鈴木さんの不安な気持ちは置き去りにされ続け、
「シェルター専属の弁護士も慰謝料はあまり取れないですねとお金の話ばかり。弁護士さんも仕事なのでしょうけど……」
施設の職員が「ここを出た人はみんな元気にやっている」と勇気づける言葉や「新しい街も住めば都」と慰める言葉も、
「他人事のような言葉に、余計に孤独を強く感じました。私は実家で虐待を受けていたため、家族への憧れがとても強かったのです。だからこそ家族が壊れてしまい、ダメな家族という烙印を押されたようで絶望していました。すごく不安なのに誰も真剣に話を聞いてくれず、不安で押しつぶされそうな毎日でした」
と、そのつらさを理解してほしかったと話す。皮肉にも一番話を聞いてくれたのは、
「警察に拘留されている夫が私選で雇った弁護士さんでした。夫は“起訴しないように妻に言ってくれ”と弁護士さんに話していたようですが、弁護士さんは“あなたが変わらなければいけないんですよ”と怒ってくれました。私の話も本当によく聞いてくれて、家族のことを一番考えていたように思います」
公的シェルターに滞在できるのは原則2週間。鈴木さんはその後、民間のシェルターに半年間滞在した。夫は起訴され執行猶予つきの判決が下された。
「夫も釈放され、“俺が悪かった”という手紙なども送ってきていましたし、私も子どもをひとりで育てる勇気もなかったので、夫のところに戻ることに決めました」
その旨を区の福祉事務所の相談員に告げると、相談員からは驚きの言葉が。
「こちらの言うことを聞かないのなら、早くシェルターから出ていってください。何があっても責任はとれないのでこの誓約書に一筆書いてくださいと言われました。すごくショックでした」(鈴木さん)
相談員の態度に不信感
桑島准教授は、支援の窓口となる相談員について、
「婦人相談員の対応はその資質に左右されるところが大きいのは確かです。被害者の相談をよく聞くことで問題の解決ができる場合も多い。ベテランの相談員ほど保護件数は少ないということもあります。
被害者の相談を聞く相談員の多くは非正規雇用で待遇も悪い。にもかかわらず、DVや虐待といった非常に重い事案を多数扱う。自治体によって違いますが、研修をキチンと受けさせてもらえなかったり、数年で異動となり経験が蓄積されなかったり、専門的な知識を持っていない人を配置している場合もある」
鈴木さんの対応をした相談員が数ある相談により疲弊していたのかは定かではないが、この対応はあんまりだ。
鈴木さんは結局、夫のもとへと戻ったが1年ほどで夫の暴力は再発。子どもとともに何度も家を追い出された。
「相談員の態度に不信感があり、絶対に相談には行きたくありませんでした。お金もなく仕事もしなければいけない、子どものこともある。警察に行けば執行猶予中の夫は刑務所です。でも家庭を壊したくない。そんな思いが交錯し、限界にきていました」