「親から虐待」の傷は、大人になっても深刻だ 食事は床に置かれ、母は「口で食え」と言った

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あなたたちは離婚し、私のことなんて考えずに暮らしてる。でも、私は今もお風呂に入るのが恐怖。何度も何度も吐く。あなたたちの顔なんて思い出せないのに、恐怖感だけよみがえってくる。

私を殴る時、ママは叫んでいたよね。

「おまえのせいだ。おまえが悪い。私の体に一生残る傷をつけた。おまえなんか死ねばよかった。なんでまだ生きてんだよ」

大人になってわかった。私、逆子だったんでしょう? 正常の位置に戻れば自然分娩だったのに、戻らなくて帝王切開した傷がママにとって一生の傷だったから、私を恨んで殴り続けたのでしょう。私、どうすればよかったの?

ねぇ、パパ。いつもイライラしてたよね。パチンコに負けたり、仕事で思い通りにならなかった時、階段を上る音ですぐわかった。殴られる。蹴られるって。パパは私を見つけると、「気持ち悪い」って蹴り飛ばした。痛くて、怖くて、私、いつも土下座してた。ごめんなさい、ごめんなさい。悪くないのにずっと謝ってた。でも、やめてくれず、ずっと私を蹴ってた。

無言で蹴り続けてスッキリすると、いつも笑った。あなたたちが私にしたことは、思い出すたびに吐き気がする。思い出したくもないのに勝手に私の気持ちに入り込んで痛めつけてくる。

虐待された子は、虐待した親を殺しても罪に問われない。そんな法律ができるなら、私は喜んで実行する。最後に笑うのは私……って、そんな間違った正義を振りかざさないよう、毎日毎日自分と戦っている。

息を引き取る直前まで、おばあちゃんはこう言ってたの。

「パパとママを怨んじゃだめ。怨むなら、おばあちゃんを怨みなさい」

大好きなおばあちゃんを怨みたくない。悲しませたくない。ただそれだけの気持ちで、あなたたちを殺さずにいるの。だから早く私を解放して。これ以上、私を苦しめないで。人を怨まず、人を愛せる私になりたい。

今日も日本のどこかで…

『日本一醜い親への手紙 そんな親なら捨てちゃえば?』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

上記のような虐待は、決して珍しいものではない。昨年(2016年)春、日本小児科学会は、虐待死の可能性がある15歳未満の子どもが全国で1年間に約350人に上るとの推計値を発表した。今日も日本のどこかで子どもが親に殺されている。

『日本一醜い親への手紙 そんな親なら捨てちゃえば?』に執筆できた100人は、そうした虐待から必死の思いで生き延びてきたサバイバーたちだ。

彼らがつらい過去を思い出しながらフラッシュバックに苦しんでも「親への手紙」を書き上げた勇気を思う時、あなたは「子育ての苦労もわかって」と言えるだろうか?

今 一生 フリーライター・編集者

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こん いっしょう / Con Isshow

1965年生まれ、群馬県出身。早稲田大学第一文学部(当時)除籍後、コピーライターを経てフリーの雑誌記者に。1997年、『日本一醜い親への手紙』を「Create Media」名義で編集。Create Media名義の編著に『子どもたちの3.11』(学事出版)ほか。著書に『よのなかを変える技術 14歳からのソーシャルデザイン入門』(河出書房新社)、『猫とビートルズ』(写真・雨樹一期との共著/金曜日)など多数。

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