渋谷がいつの間にか「池袋化」している理由 渋谷を渋谷たらしめた文化は影を潜めた

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だが、1996年に埼京線が延伸、2003年に東急田園都市線が東京メトロ半蔵門線を介して東武伊勢崎線・日光線と相互直通運転を始め、渋谷は徐々にどこからでも行きやすい場所になっていく。最後にとどめを刺したのが2013年の東急東横線渋谷駅地下化と東京メトロ副都心線直通運転だ。

簡単にいつでも行ける場所にかつてほどの輝きがなくなるのは仕方ない話。実際、ここ30年でいえば「頑張っておしゃれをしています」という人は年々少なくなっている。ファッションの傾向自体がカジュアルになっているというせいもあるが、渋谷に行くのに気張る必要はなくなったというのが事実だろう。

交流の場としても廃れつつある

駅から少し離れた高台に位置する百軒店にはこのところ個性的な店が増え、外国人客も多い(筆者撮影)

情報収集、発信手段の変化も大きい。1995年前後にはPHSがコギャルの必携品となり、その後2000年以降は携帯が、2004年以降はミクシィ、GREEなどのSNSが普及、その場にいなくても情報が入り、人とつながれる時代が到来する。ここでもまた、わざわざ渋谷へ行く必要がなくなったのである。

その結果、現在の渋谷で幅を利かしているのは大手チェーン店だ。以前のようにわざわざ渋谷に来る人は減っても、観光客を含め渋谷はそれなりに人が集まる街である。商売にはなる。センター街、文化村通り、道玄坂で目につくものといえば、ユニクロ、H&M、FOREVER21、ZARA、ビックカメラ、ヤマダ電機LABI渋谷などなど。飲食店も同様で、個性や野心的な造りで話題になるのは百軒店や神泉方面など、中心部から離れたところばかりである。

都心部でオフィス、店舗を扱う不動産会社サンライズの野里浩一氏によると、今、新宿、池袋、渋谷を同じ土俵に乗せた場合、渋谷の個性がわかりにくくなっているという。乗降客数が多く、見込み客の多い場所に出店したいと希望する企業の場合、最初の出店先として選ばれるのは日本一の販売力があり、その分、賃料は高いものの売り上げも見込める新宿。マーケットが読めるまちといってもいい。

だが、問題はその次に渋谷に出すか、池袋に出すか。「かつては個性、こだわりを売りにするなら渋谷、万人受けするリーズナブル路線を狙うなら池袋という選択がありました。どちらに出すかがその企業のその後の展開を決めたものですが、現在の渋谷にはそこまでの個性がないうえに賃料は池袋より高い。特に今は再開発の影響で物件がなく、大手でもなかなか入れない状態です」(野里氏)

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