「米政府機関閉鎖と債務上限問題」の基礎知識 過去の事例・現在の環境を押さえておこう
[23日 ロイター] - トランプ米大統領が22日、メキシコとの国境の壁建設の財源確保のためなら連邦政府機関閉鎖も辞さない構えを示したことで、9月に2つの重要法案(歳出予算法案と債務上限引き上げ法案)が議会を通過するのかどうか予断を許さなくなってきた。
政府機関閉鎖や債務上限の基本的な知識や過去の事例、現在の環境は以下の通り。
<政府機関閉鎖とは>
議会は今会計年度が終了する9月末までに、連邦政府の活動予算を手当てする新年度の歳出法案を成立させなければならない。これまでしばしば見られたように合意が得られない場合、まずはつなぎ予算案を承認しつつ、新年度の本予算の協議を続けるケースが多い。つなぎ予算と本予算のどちらも折り合いがつかないと、政府機関は閉鎖される。これは1970年代以降、何度も発生した。通常は数日間だが市場の動揺を誘いかねない要素だ。
直近で政府機関閉鎖が起きたのは2013年10月。オバマ前政権の医療保険制度改革法(オバマケア)向け支出を巡る与野党の対立が原因だった。1990年代には3回の閉鎖があり、最長21日続いた。1970年代と80年代は計14回で、あるケースは部分的な閉鎖にとどまり、ほとんどは数日で終わった。
<債務上限とは>
債務上限は、連邦政府が財務省証券(国債)を発行して借り入れられる金額を法的に定めたもの。実際の借り入れ額が上限に達すると、議会が上限を引き上げる必要があり、できなければ政府はデフォルト(債務不履行)に陥る。
財務省は9月29日までに議会が債務上限を引き上げてくれることを要望している。ただし財務省には緊急時の予備財源があるため、デフォルトが起きるのは早くて10月半ば以降になる。
債務上限引き上げ法案はどんなに遅くても10月初めか半ばまでに可決されなければならない。
これまでの政治停滞で債務が上限に達して支払いができなくなったことはないが、間一髪の状況は3回あった。2011年8月には、与野党の対立が激しくなったためスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が米国債の格付けを最上位から引き下げ、市場は2週間にわたり2007─09年の世界金融危機以降で最大の混乱をきたした。
<歳出予算案と債務上限の関係>
2つは本来別々に審議されるが、今回はセットで取り上げられる公算が大きい。共和党の債務上限引き上げ反対派が、歳出予算の削減を要求しそうだからだ。一部のアナリストは、議会が両方の問題に同時に対応しようとする可能性があると話した。
<政治情勢は>
歳出予算法案と債務上限引き上げ法案について、下院では単純な過半数で可決が可能。しかし上院では60人の賛成が必要となり、52議席しか持たない共和党は、民主党の一部の支持を得なければならない。
そこで問題となるのがメキシコ国境の壁建設だ。下院の共和党保守派は壁建設の必要を訴えるトランプ氏に共鳴し、関連予算をどの歳出法案でも優先すべきだと主張。一部からは、この予算獲得のためなら進んで政府機関を閉鎖しようとの声も出ている。
一方、共和党穏健派は政府機関閉鎖を好ましくないと考え、党指導部も、同党の統治能力への不信を増幅させかねないとして政府機関閉鎖を回避することを決意している。
民主党は一致団結して国境の壁建設に反対の姿勢で、政府機関が閉鎖されればその責任はひとえに共和党にあるとけん制する。
トランプ政権は今月に入って方針を転換し、債務上限引き上げ問題を他の政策措置と絡めず取り組んでいくやり方(クリーン・ビル)を支持した。民主党と共和党の穏健派もこれを支持する。しかし共和党保守派、特に下院はしばしば債務上限引き上げ法案を「人質」にして、歳出予算案の修正を主張する傾向があり、クリーン・ビルに異を唱えている。
*見出しを修正しました。
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