まさかの「米デフォルトリスク」はあるのか 「利払い」がなかったらどうなってしまうのか
米連邦公開市場委員会(FOMC)は、6月に米連邦準備理事会(FRB)のバランスシートの具体的な縮小方法を公表し、7月の声明で米経済がおおむね予想通りの展開となれば「比較的早期」に縮小に着手する方針を確認した。
FRBの資産縮小開始が後ずれする可能性も
市場は次回9月19、20日のFOMCで、縮小プロセスの発表があり、10月に縮小が開始されると見込んでいる。
しかし、ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は17日、FRBはバランスシートの縮小開始時期を決定する際に、債務上限を巡る議会での議論も注視するだろうとの見方を示した。 「FRBは9月にBS縮小を決定することはできるが、米財務省の資金繰りが厳しくなることが見込まれる中で、開始時期が後ずれする可能性もありそうだ」(日本政府関係筋)との見方もある。
債務上限引き上げにメドがつかない状況は、米財務省の第3・四半期の債務発行計画を狂わせた。
米財務省は、FRBの国債買い入れ減少計画に備えて、年内に財務省証券の発行を増加させる方針を示していた。
しかし、債務上限を巡る討議が長引く中、8月2日に公表した四半期定例入札の詳細では、第3・四半期の入札規模を960億ドルに据え置き、検討していた超長期債の発行も見送った。
この結果、発行増が第4・四半期に集中し、発行規模が5010億ドルと大幅に拡大する見通しで、米国債市場の需給悪化要因になりそうだ。
米国では、国債発行枠に上限(法定債務上限)があり、超過は許されていない。現在の上限は19.9兆ドル。
オバマ政権下の2013年10月には、債務上限に対する暫定予算案が期限の9月末まで成立せず、約18年ぶりに米国の連邦政府機関が一部閉鎖され、80万人以上の政府職員が自宅待機となった。
米議会では上下両院とも共和党が過半数議席を占めるが、簡単にはいかない構造問題がある。自由議員連盟(フリーダム・コーカス)の30─40人の共和党議員は、オバマ政権時代にも、債務上限引き上げに反対。彼らが今回も反対すれば、民主党議員の支持が必要になる。
ムニューシン長官は「米国の信用を維持することが最も重要」とし、米国は期限までに債務返済を行う必要があると再三、議会で訴えているが、民主党は歳出削減との抱き合わせという条件を出し、長官が望む条件無しの「クリーン」な引き上げのメドは立っていない。
9月上旬に予定される4週間物TBの入札に向け、市場がデフォルト・リスクに一段と神経質になれば、再び短期金利が急上昇するリスクも否めない。
(森佳子 編集:田巻一彦)
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