京王の「通勤ライナー」は他社とはひと味違う 先頭形状は鋭角で、車内案内はステレオ放送

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今回製造されるのは5編成で、総投資額は約100億円。1編成10両なので、1両当たりの価格は2億円となる。回転するシートを含めさまざまな機能を備えているだけに通勤列車の価格としてはやや高めといえるかもしれない。

車両メーカーはコンペで争われ、JR東日本グループの総合車両製作所に決まった。「競合するもう1社の車両と両方見てもらって、どちらのデザインがいいか車内で投票したところ、ほとんどの人がこちらの車両を支持した」(若松課長)という自信作だ。

車内ビジョンが設置され、中吊りスペースは消滅(撮影:尾形文繁)

確かに完成度の高い車両ではあるが、少しだけいじわるな質問をぶつけてみた。「コンセントも天井車内ビジョンも他社の通勤ライナーですでにやっているものばかりではありませんか」。だが、若松課長は胸を張って応えた。「鉄道会社の設計陣は他社とつねに情報交換をしており、聞かれれば教えてあげます」

京王が座席指定列車の導入を発表したのは2016年3月だが、構想自体はその何年も前から練っていたという。そのため、実用化は他社のほうが早かったが、実は京王のアイデアがベースとなっていたというものも少なくないようだ。

ステレオスピーカーを設置した理由は

京王沿線には高尾山のような観光地がある。5000系を観光目的にして活用する可能性はあるのか。この質問については、「まずは通勤着席のニーズに応えていきたい」と同社は慎重な姿勢を示した。しかし、Sトレインは、土休日には西武秩父や元町・中華街への観光に使われている。京王が同様の戦略をとれないはずはない。

天井に設置されたスピーカー(撮影:尾形文繁)

将来戦略のヒントになりそうなものが1つある。5000系の車内には英国の音響機器メーカー・KEF社製のスピーカーが車両の左右に配置されている。車内アナウンスはステレオで流れてくる。「営業運転でBGMを流すことは想定していない」と京王側はコメントするが、車掌のアナウンスをステレオで聞かせるためだけに高価なスピーカーを設置したということはないだろう。高音質のスピーカーで音楽を流すことを含め、一般的な通勤ライナーとはひと味違う5000系の利用方法を、京王は描いているような気がしてならない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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