造船にLNG船特需、韓国勢への反撃なるか シェールガス革命でLNG船の特需到来
造船不況下に干天の慈雨
各社とも力が入るのは当然だ。00年代半ばから続いた海運・造船バブルが終焉し、造船業界は新規受注が低迷。ここに来て極端な円高の是正というプラス材料があるとはいえ、仕事量の減少と船価低迷で事業環境は依然として非常に厳しい。国内造船所の中期的な操業を維持して収益悪化を食い止めるには、ぜひともLNG運搬船の仕事が欲しい。
何しろ、マイナス162度の超低温で輸送するLNG運搬船は工事が大掛かりで、金額も1隻当たり200億円前後。一般汎用商船で代表的な大型バラ積み船の4隻分にも相当し、付加価値も大きい。
そうなると、受注争奪戦の行方が気になるところだが、最終的には全社に仕事が回る可能性がある。というのも、国内のLNG運搬船の建造能力は全社足しても年間17隻前後。一方、30隻以上ともいわれる今回の特需分は船の引き渡しが17~18年に集中しそうで、「特定の企業だけでは供給が間に合わない」(業界関係者)事態も予想されるからだ。
むしろ、本質的な問題は、日本勢がこの特需をテコとして、再びLNG運搬船で世界的な競争力を取り戻せるかどうかだ。
三菱重工の船海営業部長で合弁会社MILNGカンパニーの社長も務める近江治彦氏は、「国内は当然として、海外でも仕事を取っていく。今治造船と組んだのも、対韓国を見据えてのことだ」と話す。「日本の造船会社は、いつのまにかLNG船の世界選手権から遠ざかってしまった。今回の提携によって、再びグローバルプレーヤーに舞い戻る。異常な円高・ウォン安が修正され、韓国勢と戦える条件はそろってきた」。
造船不況とアジア勢との競争にさらされ、厳しい環境下にある日本の造船業界。シェールガス革命によるLNG運搬船の国内特需は、世界市場で再び存在感を取り戻すきっかけにもなりうる。このチャンスを生かせるかどうかが、国内大手造船会社の将来をも左右しそうだ。
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