社員69人で爆走する「千葉テレビ」の正体 番組もスポンサーも広告も、全部「常識外れ」

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昨年、45周年記念のキャンペーン広告として打ち出した驚愕の中吊り広告。千葉テレビの社風を聞くと「よくも悪くもワンダーランド」と答える社員もいた(写真:千葉テレビ)

昨今、民放各局の事業環境は良好とは言いがたい。スマホやタブレットの普及などで、どれだけテレビが見られているかを示す「総世帯視聴率」は下落基調が続く。長期的にテレビ広告が伸びる見通しはないのだ。

さらに、総務省では放送コンテンツをネットで同時配信することについて議論が進んでいる。懸念されるのは「同時配信が広まった場合、キー局の番組が全国に流れ、地方局は見られなくなり、経営が悪化するのではないか」といった問題だ。

千葉テレビはどう生き残るのか。かつて総務省の近畿総合通信局長や、日本BS放送の制作局長を務めた上田誠也社長が強調するのは、あくまで地元密着のコンテンツに全力投球するということだ。たとえば2011年の東日本大震災時には、千葉県も沿岸部を中心に被災した。被害状況はもちろん、計画停電の情報や銭湯の営業情報など、住民に役立つ情報をかき集めて発信し続けた。特別編成は135時間超に及んだ。

「県民に求められる番組を作り続けていけば、信頼関係が出てくる。私が社長に就任したときには一部で東京のニュースなどもあったが、そこは地元の情報にシフトするように指摘してきた」(上田社長)。

千葉テレビを全国にアピールできるか?

ネット配信の実験も行っている。「週刊バイクTVやちば見聞録など、一部の番組は、初めからネットでも配信できるように権利処理をしてYouTubeで配信している。今年はLINEニュースやヤフーニュースとも提携し、ネットに向けた展開について模索している。ほかの県の方にも千葉テレビのコンテンツを見てもらえるようにしていく」(上田社長)。

また、どういった環境になっても存在感を持つコンテンツプロバイダーであるために、現在3割程度の自社制作比率は堅持する考えだ。

「就任前、千葉県についてあまり知らなかった」と話す上田社長。千葉の歴史や文化を紹介する番組が好きで、5月スタートの「ちば旅コンシェルジュ」に期待している。また、全国にある地方独立局の動向は、ライバルとしてつねにチェックしているという(記者撮影)

加えて、上田社長は千葉テレビの存在感をさらに高めようとしている。広報部の新設を指示したのも社長だった。これまでもさまざまな施設や銀行で冊子を配ったり、番組イベントや出張授業など、地道な活動を行ってきた。ただ、今後は記者会見はもちろん、ネットやSNSを駆使して千葉テレビとコンテンツを全国にアピールしていく考えだ。

そんな中でも、どこか「らしさ」があふれてしまうのはご愛嬌。昨年、45周年記念のキャンペーンで打ち出した中吊り広告は「チバテレ爆進中!!」「チュバチュバワンダーランド こんなタイトル誰が認めたのか」「白黒アンジャッシュ 即打ち切りと言われながら12年目突入」などと、笑いと自虐を盛り込んだ内容で、どこか千葉テレビの社風が伝わってくるような広告だった。

全国キー局では考えられない番組編成や制作手法で独自路線を爆進する千葉テレビ。そこにあったのは地元に対する熱い思いと、キー局の約100分の1という予算の少なさをあの手この手で吹き飛ばす、独立ローカル局ならではの明るさ、たくましさだった。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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