日産ゴーン氏、社長を辞めても変わらぬ野望 「1000万台」グループの指揮に全力を注ぐ
「今こそ、日産のCEO職を引き継ぐのに適切な時期であると判断した」
日産自動車は2月23日、カルロス・ゴーン社長が4月1日付けで社長とCEOを退任し、後任に西川廣人共同CEOをあてる人事を発表した。ゴーン氏は引き続き代表権のある会長を務め、ルノーや三菱自動車を含む連合全体の経営を指揮する。
日産としては2000年6月以来、およそ17年ぶりの社長交代になる。だが記者会見はなくプレスリリースのみで、いささかあっさりした発表となった。
社長退任の予兆はあった
もっとも、社長交代が唐突というわけでもなかった。ゴーン氏は2016年12月に日産の傘下に入った三菱自動車で代表取締役会長に就任。三菱自動車の経営に一定の労力や時間を割くことを見越して、前月の11月には生産・開発など「ものづくり」を統括するCCO(チーフコンペティティブオフィサー)だった西川氏を日産の共同CEOに昇格させて仕事を分担していた。
またゴーン氏は日産のほか、ルノーでは会長、社長、CEOを兼務しているうえ、日産・ルノー連合の会長兼CEOにも就いており、ただでさえ多忙を極めていた。
三菱自動車を新たに加えた日産・ルノー連合の2016年の世界販売台数は1000万台規模にまで拡大。トヨタ自動車や独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズ(GM)と匹敵する規模を手に入れ、今後は自動運転や電動化など技術開発競争でいかに勝ち残れるかが焦点になる。
今回の体制変更についてゴーン氏は、「連合の戦略面および事業上の進化により多くの時間と労力をかけ、連合の持つ規模による競争優位性をパートナー各社に享受させることができる」と述べ、連合経営により傾注する考えを示した。
日産の社長兼CEOをほかの人材に任せられる状況が整ったことも大きい。かつて2兆円もの有利子負債を自動車事業で抱えた日産は1999年にルノーの傘下に入り、「再生請負人」として送りこまれたゴーン氏の大胆な経営改革で息を吹き返した。北米や中国で販売を拡大し、今年度の世界販売は提携時の2倍以上の560万台を見込む。
2013年まで8年7か月にわたってCOO(最高執行責任者)を務め、ゴーン社長の番頭役だった志賀俊之副会長は、今回の人事について「かつてはゴーンさん1人におんぶに抱っこだった日産が強くなってきたことの裏返しでもあり嬉しい」と話す。
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