NECが大幅下方修正、富士通と分かれた明暗 構造改革に苦しんだ両社の差が開き始めた

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事業構造転換費用は前期と今期の2期で集中投下する計画だ。来期も発生する可能性があるが、金額の水準は大きく下がる見込みである。すると来期の営業利益は、今期の営業利益予想の1200億円に事業構造転換費用450億円を足した1650億円が最低線となる。

構造改革の成果がどの程度発現するかにもよるが、来期の売上高営業利益率の水準を、富士通の塚野英博CFOが「5%前後」としていることを加味すると、2000億円台に達する可能性もある。

通信向けや官公庁向けの売り上げが多いこと、パソコンの国内シェアが高いことなど、富士通とNECには類似点が多い。にもかかわらず、なぜ収益力で差がつき、今後ますます差が広がりそうなのか。富士通の塚野CFOは「同業他社のことはわからないが、当社は安定的である」と述べるにとどまった。

ニフティを介してノジマ向け拡大

さらに、富士通は完全子会社化したばかりのニフティの消費者向け部門(ネット接続や格安スマホ事業など)を2月に分社化し、家電量販大手のノジマに売却することで合意した。売却予定日は4月1日。売却額は250億円で、簿価(非公開)を差し引いた百数十億円の売却益が転がり込む(利益計上は来期初めの予定)。

ニフティはノジマ傘下で成長路線を歩めるか。富士通との協力関係も気になるところだ。左からノジマの野島亮司副社長、野島廣司社長、ニフティの三竹兼司社長(記者撮影)

この売却を機に、「ノジマ・ニフティ・富士通との3社の関係を強化するつもりだ」と塚野CFOは話す。

ノジマの野島廣司社長は「川下の家電量販と川上のIT企業が組むことに意味がある。ニフティの買収によって新しい業態・業界を作る。それができることを考えたら、250億円は非常に安い買い物」と意気込んでいる。新設される会社はニフティのブランドを引き継ぎ、人員削減もしない方針だ。

「新しい業態・業界」の詳細を野島社長は明らかにしていないが、ニフティの三竹兼司社長が「野島社長のニフティへの期待はとてつもなく大きい」と語ったことから推察すると、新事業立ち上げの構想は壮大なようだ。構想が大きければ大きいほど、ニフティを介して富士通のノジマ向けICTサービスが拡大する余地は大きくなる。

近年の厳しい環境の中、共にリストラや構造改革を進めてきたNECと富士通の両社だが、明暗が分かれつつある。NECの逆転はあるのだろうか。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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