実は57万人もいる「401k難民」とは何なのか 「個人型DC」を正確に知るための基礎知識

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2001年のDC制度発足以来、金融機関は企業型DCの獲得に注力し、個人型DCにはあまり力を入れてこなかった。個人型DCは、あくまで企業型DCから“あふれた者“をすくうための器に過ぎないとの認識であり、積極的に個人型DCの加入者を獲得しようとする金融機関は少なかったようである。

ここで、金融機関はなぜ個人型DCの推進・獲得に積極的ではなかったのであろうか。その要因のひとつとして、個人型DCは「儲からない」と考えられている側面が挙げられる。これが、移換対象者への周知不足の一端ともなっていると考えられる。

個人型DCに積極的でなかった金融機関の「事情」

金融機関が加入者獲得に力を入れているNISA(少額投資非課税制度)と比較してみよう。NISAも個人型DCと同じく税制メリットを有する資産形成手段のひとつだが、NISAは株式や投資信託で年間120万円まで(累計では600万円まで)のまとまった資金を運用することが可能だ。金融機関から見ると、資産残高がすぐ積み上がるため、短期的な収益につながる商品であると言える。

一方、個人型DCは、月額数万円の掛金をコツコツ積み立てる制度であり、資産残高がすぐに積み上がるわけではない。そのため、収益に結び付くまでに時間がかかる。また、個人型DCにおいては、加入者が投資信託で運用する比率はまだ低く、預金や保険商品など金融機関にとって”うまみ”の少ない商品が選択されることが多い。そのため、短期的な収益は望めないという判断にもつながっているようだ。さらに、個人型DCは現役世代層が主要なターゲットとなるため、金融機関が標準的なターゲットとしているリタイアメント層(≒資産家層)向けのビジネスモデルとの乖離が大きいとも考えられる。

現役世代層向けの商品という点で共通している「住宅ローン」とも比較してみよう。住宅ローンは、近年の低金利環境や利率引き下げ競争の影響もあり、金融機関にとって”うまみ”が多いとは必ずしも言えなくなってきているものの、それでもいまだに一定の収益が確保できる商品である。住宅ローンも個人型DCも、日中は忙しい現役世代層へのアプローチ方法は限定されてしまう。そのため、インターネットが主なアプローチ手段となっているのが現状だ。しかし、インターネット上での加入者獲得は、一定規模のシステム投資や経費がかかるうえ、実績も不安定になりがちであることから、費用対効果を描きにくいビジネスモデルでもある。

以上の点から、金融機関が個人型DCのシェア拡大に積極的に取り組むためには、短期的な収益獲得から切り離して判断することが大切である。個人型DCの獲得は「マス顧客の基盤拡大」を目的として、将来を見据えた長期投資と割り切る判断が求められる。

現在でも、個人型DCに積極的に取り組んでいる金融機関は、リテール戦略を重視する「銀行」や、個人顧客基盤の拡大がつねに求められる「ネット系証券」が主体となっている。まさに確定拠出年金で必要となる長期投資の視点が、金融機関各社にも求められているのである。

瀧川 茂一 プルーデントジャパン代表取締役

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たきがわ しげかず / Shigekazu Takigawa

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了、ファイナンス修士(専門職)MBA。システムエンジニアを経て、自身のライフイベントをきっかけに、確定拠出年金分野での教育専門会社であるプルーデントジャパンに入社。多くの運営管理機関からのアウトソース業務を請けつつ、事業主から直接、「加入者目線の継続教育」の企画を依頼され年間200回以上の 「DC継続教育」プロデュースを手掛ける。近著に『5,000円から始める確定拠出年金』(彩図社)がある

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