「相続税を払いすぎた人」が見逃していた知恵 親が元気なうちに「墓」と「家」を話しておこう
さらには、夫が自分名義の家を妻に譲与するのも、相続税が少なくなります。というのも、結婚して20年を過ぎた配偶者に対して居住用の家(または、居住用の家を買うための資金)を贈与する場合は、2000万円まで贈与税がかからないという制度になっているからです。
ただし、これが適用されるには「結婚して20年を超えた後の贈与である」という以外に以下の2つの条件があることは忘れてはなりません。
2.家をもらった年の翌年3月15日までに、その家をもらった本人が実際住んでいて、その後も引き続き住む見込みであること
また、贈与時には、登録免許税、取得税などの登録に必要な費用が20万~30万円ほどかかってきますが、それを考慮したとしても、相続税対策としての効果は大きいので安心してください。
私が出会った84歳になる男性は、「結婚してもう59年になる妻に、今住んでいる家をプレゼントしようと思うんだ」とおっしゃっていました。「ついこの間、娘に言われたんですよ。『お父さん、もうすぐダイアモンド婚式なんだし、お母さんがビックリするようなプレゼントあげたら?』と。それもそうだと思い、それから娘と相談して思い出の詰まった家をプレゼントすることが、長年連れ添って自分を支えてくれた妻にいちばん感謝の気持ちを表すことができるかなと思いまして……」と。
この会話だけでも、ほっこりさせてもらったのですが、娘の言葉をきっかけに、贈与という言葉を「プレゼント」と置き換えたご主人が、この58年間の奥さんへの感謝の気持ちが込められていると、とても心に響いたことを思い出しました。
相続税を払いすぎないために
日頃から何でも話しているご家族なら、いつのタイミングでも相続の話ができるかもしれませんが、まだ相続の話をしたことがない家族や、タイミングを逃してしまっている家族には、親が財産を囲い込んでしまい生前に何も対策ができず、残された子どもが多額の相続税を払うことになってしまったケースは少なくありません。
財産のことになるので、ダイレクトに話を出しづらいと思う場合は「親戚や友人が相続の問題が起こったときに大変だったみたいだから、心配になって……」「高齢化でお墓不足が起こるかもしれないって聞いて心配で……」と自分が考えるきっかけになった出来事を付け加えて話してみる方法があります。
また、今すぐとまではいかないけれど近い将来両親に考えてほしいと思っている方も、「友人に誘われて終活セミナーに行ってきた」と終活について興味を持ち出したことを切り口に、まずは、すぐに始められるエンディングノートの作成から行うことを、ご両親にすすめる手もあります。
相続の話は「おカネ」に直結するだけに、多かれ少なかれ話しづらい部分もありますが、同じおカネの話をするにしても、家族への思いやりを持った言葉ひとつで伝わり方は随分変わるものです。これからの家族のために「ご両親の将来の新しい家であるお墓の購入」と、「お父さんからお母さんへ2人の思い出の詰まった家のプレゼント」は、覚えておいて損のない相続税対策の1つです。
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