電車の座席が窮屈な理由は「肩幅」にあった

現状では平均的な男性でギリギリのサイズ

シートの長さを決めるのに必要な人体の場所とはどこか。まず思いつくのは臀部(お尻)だろう。「設計のための人体寸法データ集」(通商産業省生命工学工業技術研究所)によると、人間の臀部の長さの男女平均は34.8センチ。また、95%の男性の臀部の長さは37.7センチ以内に収まる。同様に、95%の女性の臀部の長さは39.9センチに収まる。つまり、シート幅は43センチあれば十分ということになる。

にもかかわらず、実際に座ってみると隣の人に圧迫され、肩をすぼめたり前かがみしなくてはいけない場合もある。臀部の大きさで考えれば十分な大きさのはずなのになぜ窮屈なのか。その理由は、「人間の身体でもっとも幅が長いのは肩だから」と大森氏は指摘する。

「設計のための人体寸法データ集」によれば、人間の肩幅の男女平均は43.2センチである。この数字だけを見るとやっぱり43センチで十分に思えるが、男性に限れば肩幅が43センチ以内に収まる人は全体の10%程度にすぎない。男性の肩幅の平均は45.6センチだ。シート幅が49.5センチあれば95%の男性の肩幅がようやく収まる。隣に座っている人が大柄な男性だったら、43センチではとても足りない。

袖仕切りも窮屈さを助長する

そんなこともあってか、近年では各社が1人当たりシート幅の拡張に取り組んでいる。JR山手線で現在主力のE231系の1人当たりシート幅は45センチだが、新たに投入されたE235系は1センチ広げて同46センチとした。東京メトロ・日比谷線で今年度から営業運転を開始する13000系の1人当たりシート幅も現行の03系から3センチ長くなり46センチとなった。これでようやく平均的な男性にとって十分なサイズになったが、大柄な男性にはやっぱり厳しい。

山手線E235系の袖仕切り。肩やひじを逃すため大きなくぼみを設けた(撮影:風間仁一郎)

最近の通勤電車が窮屈に感じる理由がもう一つある。ロングシートの両端にある仕切りが、ひじ掛けのようなパイプ型から板型に変わりつつあることだ。仕切りがパイプ型だと、端に座っている人がパイプの上にひじをかけることができるが、ドア横に立っている人には座っている人のひじが邪魔になる。立っている人の臀部が座っている人に触れるのもトラブルの種になりかねない。ひじ掛け型から板型に変わったことで、立っている人と座っている人が干渉しなくてすむようになった。また、仕切り板が大型であれば、ドア脇に立っている人が背もたれとして活用することもできる。

その反面、ロングシートの両端に座っている人が肩やひじを逃がせないという問題が生じた。

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