JR九州、「鉄道黒字化」の裏にある大胆仕掛け 固定資産のうち「車両」はわずか1億円
上場後のJR九州の経営課題については機会を改めて説明する。上場日である今回は、2016年3月期にわずか6.7億円となった鉄道事業固定資産の正体を探ってみよう。
基本的なこととして、JR九州は固定資産に限らず、鉄道事業用の資産についてはすべての路線を一つの資産グループとして扱っているため、鉄道事業資産一式と記載される。一方、同社の2016年3月期の決算書には「固定資産の科目ごとの総額」という項目が用意されており、鉄道事業に該当するのか否かは不明なものの、ある程度は判別が可能だ。
以上の観点でこの項目を見ると、「車両」の総額として1億円が計上されている。車両というのは鉄道事業に使用するものと考えられるので、6.7億円の鉄道事業固定資産の一部と考えてよいだろう。
いったいどの車両のことなのか
ここで疑問が生じる。1億円とは、JR九州が2016年4月1日現在で保有する1677両すべての車両分の使用価値であるのか、それともたとえば九州新幹線用の新幹線電車であるとか、クルーズトレインの「ななつ星in九州」用の車両などに限られているのかという点だ。この点を推測してみよう。
念のためにJR九州が2015年度中に新たに導入した車両を調べてみた。使用価値の有無は、単純に製造年度の新旧で判断しているのではないかとも考えられるためだ。調べたところ、同社がこの期間に導入した車両は1両だけ。観光列車として知られる「ゆふいんの森」の増結用としてつくられたディーゼル動車(ディーゼルカー)であった。
減価償却資産の耐用年数等に関する省令によると、ディーゼル動車が含まれる内燃動車の耐用年数は11年だ。同社は固定資産の減価償却の方法として、鉄道事業固定資産のうち消耗品を交換する取替資産を取替法、建物は定額法を採用し、いま挙げた以外の固定資産は車両を含めて定率法を適用しているという。耐用年数が11年の固定資産の償却率は0.227である。
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