「音声認識家電」は日本でもブレイクできるか 国内メーカーが揃い踏みしたが・・・

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アマゾンは外部サービス事業者との連携を強化しており、公開された機能の数は1400を超える(2016年6月時点)。現在は米国のほか、9月末から欧州でも販売している。また、AI開発で先行していたグーグルも音声認識デバイス「グーグル ホーム」を11月4日に米国で発売し、アマゾンを追撃する構えだ。

こちらがグーグル ホーム(写真:グーグルのホームページより)

日本への上陸はアマゾン、グーグルともに未定だが、時間の問題と思われる。巨大な黒船が来る前に足場を固めたい日本勢だが、その道のりは容易ではない。

やはり、最大の課題はアマゾンには遠く及ばない、提携サービスの少なさだろう。現状、ソニーとシャープ製品の機能は限定的なものだ。誤認識のストレスや手元で入力した方が早い場合も多く、購入するメリットを感じさせられるか疑問が残る。

もちろん、外部のサービス事業者との連携が急務であることはメーカーも百も承知。ソニー、シャープともサービス拡充に向け協議中だ。

シャープは家庭内のインフラ整備が不可欠

一方、シャープの「ホームアシスタント」のように、家庭内の利用を前提とした製品の場合、無線LANの一層の普及も課題となる。家庭内の無線LANの利用状況は5割強といわれるが(出典:総務省「平成26年通信利用動向調査」)、3人以上の世帯では利用率が7割を超える一方で、単身世帯では33%、高齢世帯では17%となるなどムラがある。

シャープがターゲットとして想定している“ITリテラシーのない人”も使えるよう、通信事業者を巻き込んで家庭内の通信インフラを整備していくことが求められる。

世界のネット界の巨人たちが日本市場を席巻する前に、消費者が数万円払ってでも買いたいと思わせられるハードとソフトに仕上げられるか。日本の家電メーカーに残された時間はそう長くはない。

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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