寝台夜行列車は、こうすれば再生・活躍できる 需要がないのが廃止の理由ではなかった
航空機の最終便の後に出発し、始発便よりも早く目的地に到着するには、速達性が要求されるため、列車種別は特急になる。このような時間帯に運転すると、ビジネスなどに利用価値が高い。今後は、USBポートの設置やWi-Fiサービスなどを充実させる必要がある。さらに東京~松山間や東京~広島間、上野~青森(秋田経由)間などが、ビジネス需要も期待できるため候補となる。
採算性を向上させるには、客単価の高いA個室の組み込みを増やし、1編成当たりの売り上げも多くしなければならない。1000~1200キロメートルの距離を16~20時間で結ぶ豪華寝台夜行列車であれば、採算性や高速バス、航空機、新幹線、フェリーとの差別化を考えると、編成の半分程度までA個室寝台の比率を上げる必要性がある。
グループ全体で利益率を高める
フェリーの1人用の1等寝台であっても、窓のない部屋もあるため、“スイート”や“ロイヤル”は、完全にフェリーの1等個室とも差別化ができる。またフェリーは経営合理化などの理由から、食事もバイキング中心であり、夜8時半頃に営業が終了してしまう。スポーツの強豪校の練習試合での遠征や団体客などの利用が多い。
「北斗星」「カシオペア」などの寝台夜行列車は、予約制の豪華ディナーが用意され、ディナー終了後は夜11時まで軽食を扱うパブタイムとして営業されるなど、フェリーとも完全に差別化が図られている。食堂車もJRの子会社が運営していたことから、食堂車の飲食やオリジナルグッズの販売も、寝台夜行列車の売り上げとして考えれば、利益率は改善される。近鉄の「しまかぜ」は、定員が少ないこともあり、列車本体は赤字であるが、ビュッフェの売り上げや伊勢志摩にある近鉄の施設への入館者の増加など、近鉄グループ全体で「増収増益」を目指している。JRも近鉄を見習ってグループ全体で増収増益を目指す必要がある。
“スイート”や“ロイヤル”などは、ウエルカムドリンクやアメニティーキット、トイレ・シャワーにAV装置も完備するなど、至れり尽くせりのサービスのため、車両1両当たりの生産性はよくないように感じるかもしれないが、これらの設備は企画乗車券などを発売しなくても、閑散期でも部屋が埋まる。そのうえ、補助ベッドを備えることで、1人用の“ロイヤル”が2人用個室に、2人用の“スイート”が3人用個室になり、個室1室当たりの生産性も向上する。今後は、補助ベッドは不可欠なサービスといえる。
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