中国はコンテンツの墓場、日本の漫画も苦戦中 中国の出版市場で何が起きているのか(下)

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テレビドラマも各テレビ局が輸入できるのは年間1作品のみ。しかも、ゴールデンタイムには放映できない。海外アニメも、ゴールデンタイムは禁止だ。ゲームに至っては、ゲーム機の輸入すら禁止されている。

漫画も同様で、出版物を規制する新聞・出版総署は、海外作品の翻訳・出版をほとんど許可しない。許可しても、年間2~3本といったところだ。これでは、世界で当たり前に行われている版権取引による翻訳出版ができない。

また、海賊版の横行も問題だ。たとえば、『ONE PIECE』はフランス語に翻訳された正規版が100万部以上売れているが、中国では海賊版ばかりか、『ONE PIECE』と『進撃の巨人』などの人気漫画を勝手に1冊に収めた“オールジャパン”の海賊版雑誌まで発行されている。さらに、ネットでは日本の人気漫画の海賊版PDFが流通している。

こうした版権取引の壁を乗り越え、なおかつ、海賊版の流通を阻止するにはどうしたらいいのか?

角川の漫画誌『天漫』の苦肉の策

講談社と角川グループが考えたのが、中国の出版社と提携し、「刊号」をもらって漫画雑誌を発行することだった。中国では出版社はすべて国営、官営で、出版は許可制である。つまり、新聞・出版総署から、「発行してよい」という「刊号」をもらわないかぎり、雑誌は一切発行できないことになっている。そこで、両社がまず取り組んだのは、提携する出版社を探すことだった。

中国で漫画誌を出すということは、簡単に言うと、講談社の場合、中国版『少年マガジン』を出そうということになる。かつて日本の漫画誌の黄金時代を、中国で再現できないかと考えたわけだ。

中国で日本と同じ漫画誌を出す。このビジネスで先んじたのは、角川グループのほうだった。角川では11年9月に、漫画誌『天漫』を創刊した。角川が組んだ相手は、湖南中南出版伝媒集団。10年4月、角川グループが49%、湖南中南出版伝媒集団が51%の出資で、広州に「広州天聞角川動漫有限公司」が設立され、ここが発行元となって『天漫』は創刊された。

この『天漫』には、人気のガンダムシリーズの最新作『機動戦士ガンダムUC』、『涼宮ハルヒの憂鬱』の中国コミカライズ版などの日本の人気作品が並び、中国人作家の作品も収録された。

人口は日本の10倍もある中国。どう考えても、漫画誌は成功するはずだった。

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