赤字も穴埋めした「ほくほく線」の"投資手腕" 沿線人口減、内部留保取り崩し…課題も山積
2015年度の平均通過人員(輸送密度)はまだ判明してないが、1000人超えはほぼ確実とみられ、場合によっては1500人までいきそうだ。『はくたか』の計画がなかった頃(1983年)の経営調査では1459人と推定されており、その後の人口減少も考慮すると、比較的良好な数字になるだろう。
また、今年6月7日には佐川急便との事業提携を発表。10月からほくほく線の列車を使った宅配便輸送の実証実験を行う考えで、2017年4月以降の本格実施を目指している。イベントについても「鉄道マニア向けだけではなく、地元住民向けのものもどんどん企画していきたい」(大谷部長)としており、収入増を狙う「攻め」の経営はさらに続きそうだ。
とはいえ、『はくたか』が運転されていた頃の輸送密度は最大8000人台で、全体の利用者が激減したのは確か。通常、1000人台では一定の公的支援がない限り、路線の維持が難しい。ただ、北越急行のこれまでの決算を追ってみると、直ちに存続の危機を迎えるわけではないことが分かる。
「攻め」を支える鉄壁の財務体質
決算公告によると、1997年度の営業損益は6億8800万円の黒字。純損益も4億6200万円の黒字で、これにより開業前の損失を一掃している。その後も『はくたか』の通過収入に支えられて順調に推移し、2013年度の純損益は過去最大となる11億7900万円の黒字だった。2014年度の純損益は一転して11億7800万円の赤字だったが、これは160km/h運転の中止による資産価値の評価損を特別損失として計上したためだ。
こうして生み出された利益の大半は、内部留保として徹底的に積み上げられてきた。これは将来の『はくたか』廃止を想定し、開業前から内部留保による赤字の穴埋めを考えてきたためだ。この結果、2014年度の利益剰余金は92億2800万円に。しかも、同年度の固定資産は129億3500万円だが、このうち鉄道事業用の資産はわずか1億300万円で、残りの128億3200万円は全て「投資その他の資産」として計上されている。
地方鉄道の財務に詳しい鉄道研究家の柴田太郎さんによると、北越急行は開業後数年間、借入金の返済を優先。2003年度以降は営業外収益(金融収益)が営業外費用を上回り、内部留保をそのまま金融資産に回して運用する「守り」の経営を続けてきた。ここ数年は毎年3億~4億円の営業外収益を計上しており、柴田さんは「地方の鉄道会社とは思えない、鉄壁の財務体質」と評価する。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら