クミアイ化学が農家の「常備薬」狙い、創業以来最大級の殺菌剤

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クミアイ化学が農家の「常備薬」狙い、創業以来最大級の殺菌剤

農薬専業大手、クミアイ化学工業は10月10日、同社としては最大級の新製品の販売を開始した。

新製品「ファンタジスタ」は、当社を発祥とするイハラケミカル工業と共同開発した、新規化合物ピリベンカルブを有効成分とする野菜、果樹用殺菌剤。通常は2~3作物に対する効果が確認された段階で農薬登録申請をするのだが、ファンタジスタは20作物40病害への効能を謳っていることから、満を持しての投入ということがわかる。名前には、オールラウンドにゲームをコントロールするサッカー選手のようになってほしい、という願いが込められている。

新規化合物のピリベンカルブは既存のストロビルリン剤の基本構造を変換して得られたもので、病原菌の呼吸は阻害するが、植物など生物にはそれほど影響しないため安全性が高い。また、新しい構造を持つため既存の薬剤耐性菌にも効くなどの特徴がある。

野菜、果樹用の殺菌剤は10~14日間隔で散布する必要があり、同じものをまき続けると菌に耐性ができるため、基本となる基幹剤とほかの殺菌剤でローテーションを組んで散布することになる。基幹剤といえるほどの殺菌剤を持っていないクミアイ化学は、多くの作物と病害に効くファンタジスタを農家の「常備薬」的な農薬として販売する方針で、自社の既存製品を食う心配はないとしている。

クミアイ化学は3年後の年間売上高目標として、ファンタジスタを17億円、11月7日に販売を開始する、より耐性菌対策を施した「ファンベル」を3億円、計20億円の上乗せを見込む。自社原体ながら、イハラケミカルとの共同開発であるため、採算は完全自社原体の場合より下がるが、6億円程度の営業利益寄与は見込めるだろう。

今後は国内で適用拡大(ファンタジスタは稲、小麦など、ファンベルはすいか、メロン)を進めると同時に、韓国、ブラジルなど海外での農薬登録申請を準備し、育成に努める方針だ。

筒井 幹雄 東洋経済 記者

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つつい みきお / Mikio Tsutsui

『会社四季報』編集長などを経て、現職は編集委員。

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