電子マネー戦争に新展開 ナナコ商店街進出のワケ
今回の事業には商店街の負担を軽減する仕組みも作られた(下表)。
電子マネー導入のためには、加盟店への端末機の設置が必要だ。通常、設置費用は加盟店の負担になる。その負担の軽重は加盟店が思案する要素。負担大として電子マネー加入をあきらめる商店が少なくなかったのも事実だ。東京都信用金庫協会はその点も重視し、ナナコでは端末費用を13万円台まで軽減する。
さらに同協会は東京都、各行政区などと折衝、端末機設置の助成金利用も認められた。投資費用の3分の1に当たる金額の助成金を受ける結果、個々の商店が負担する費用は4万4000円足らず。助成金の対象とならない地元スーパーには、しんきんリースが2年間24回払いの割賦販売で端末機を提供する。
電子マネーに付随するポイントについても負担軽減が盛り込まれたが、これは「企業秘密」(東京都信用金庫協会)。ただし、ほかの電子マネーよりも加盟店負担が軽くなることだけは確かなようだ。
週刊東洋経済の調べでは、東京都内に点在する商店街は2000弱。その中には文京区の「ぶんぶんカード」のように、すでに独自のポイントカードを導入しているケースもある。そうした場合、ナナコに搭載したICの中に設けられた三つの領域の一つを既存ポイント制度に貸与することもできる。既存制度とのコラボレーションもナナコ上で可能だ。
購入単価アップに期待 関東以外へ拡大も
ナナコを全店展開しているセブン‐イレブンでは、ナナコ利用時の買い物単価は、全平均の10%アップという結果を得ている。この効果が加盟商店でも発揮されれば、前述の手数料還元スキームとともに、商店街の活性化にも資することになる。
その期待と導入コストの低さをもって、東京都内の信用金庫では、各地の有力商店街へのアプローチを開始している。早晩、導入商店街が実現する。「シャッター通り」などという造語が、地域商店街の地盤沈下を象徴する言葉としてすっかり定着してしまった今、この試みによって、各地の商店街に明るさがよみがえれば朗報だ。
電子マネーとポイントは、疑似マネーあるいは第2の小額通貨などと一部から呼ばれている。しかし、本当に貨幣に代替する決済手段となるには、貨幣に比肩する低コストと大衆への普及が必要だ。過去を振り返ると、マスコミ主導で大騒ぎしたものの、いつの間にか消えてなくなった電子マネーのたぐいは少なくない。近年、もてはやされてきた電子マネーも、すべてが生き残れるという保証はない。
セブン&アイグループは3月25日、東京都内のイトーヨーカ堂全店でナナコの取り扱いを開始し、4月8日には関東全域に、5月13日にはほかの地域へと拡大する。同グループ内の拡大のみならず、東京都内から全国各地の商店街にまでネットワークが拡大すれば、ナナコは電子マネーとしての本来の価値を、大きく飛躍させることができるだろう。まずは、東京都内の商店街で、セブン&アイグループの枠を超えて本格的に歩き出す--。そのチャレンジが始まっている。
(浪川 攻 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)
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