北海道新幹線、貸付料はJR東日本が実質救済 北海道は1.1億円、東日本が22億円を支払う
JR北海道が発表した支出の内訳には、同社が予測した貸付料が記載されていた。支出の内訳すべてを紹介すると、通常の新幹線運営費用が80億円、北海道新幹線固有のコストが34億円、貸付料が9億円、減価償却費が33億円、諸税が1億円、事業報酬が3億円である。
補足すると、事業報酬が支出の項目に含まれているのは総括原価を求めるためだ。JRや大手民鉄の旅客の運賃や新幹線の特急料金の上限額は、営業費等と事業報酬とを加えた支出に基づいて国土交通大臣の認可を受けるので、事業報酬は必要となる。事業報酬は配当金等や支払利息が該当し、北海道新幹線の場合は設備投資に必要な調達資金の借入金利であるという。
登場の順序からもわかるとおり、貸付料の算定時に考慮する支出とは、通常の新幹線運営費用と北海道新幹線固有のコストとを合わせた114億円だ。JR北海道の発表どおりであるならば、北海道新幹線の営業を実施して得られる利益はこの時点ですでに生じず、逆に3億円の損失が発生してしまう。
実際には貸付料は年額1億1400万円となり、さらにJR東日本が北海道新幹線の開業にともなって生じる受益について、年額22億円を支払うことになった。これは異例の措置で、実質的にJR東日本がJR北海道を救済する意味を持っているといえる。
並行在来線の損失は?
JR北海道が予測した貸付料では、利益だけではなく経営改善の度合いも含めていると思われる。9億円の貸付料に対して損失が3億円ということは在来線で営業を行っていたときの損失は12億円であり、損失が9億円減少した点をとらえて受益の範囲と見なしているのだ。
北海道新幹線の並行在来線の損失はいかほどであるのか。これまで判断材料はなかったが、JR北海道が2016年2月10日に発表した「平成26年度 線区別の収支状況等について」で明らかにされた。
それによると、並行在来線である海峡線、江差線はともに損失が生じており、管理費を除いた鉄道部門だけでの損失は海峡線が3億2700万円、江差線が14億7400万円の計18億0100万円、管理費を含めた損失は海峡線が8億8300万円、江差線が18億6400万円の計27億4700万円である。
ちなみに、海峡、江差の両線を合わせた収入は45億9400万円、管理費を除いた鉄道部門の支出は63億9500万円、管理費を含めた支出は73億4100万円だ。
以上の数値から、JR北海道が予測する北海道新幹線の収入、支出がともに大きく増えている点が気になるであろう。海峡線や江差線部分だけでなく、それまで営業を行っていなかった新青森駅と新中小国信号場(海峡線との共有区間の始点)との間の29.4キロメートルでも新たに営業を開始するからと思われる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら