希29歳の春、遠くなった故郷に思いをはせる 10代で出会った僕らも、あと少しで30歳

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別離を繰り返してきた僕たちだからこそ、別れの重みはあまりなく、想像異様にライトだったと思います。「別れても、また付き合える」、「最悪の状況になったとき”最後の砦”になってくれる」そんな風に思っていたはずです。きっと、僕が"希と同じ立場"でも同じことを思うはずです。

そして、その先に希が僕に期待していることも想像できてしまって、僕は一瞬、どうしたものかと言葉に詰まりました。

大人になるということ

久しぶりに聞いた彼女の声から、一瞬彼女と重ねてきたいろんな光景がフラッシュバックします。

一緒にテスト勉強をしたマクドナルド。

学校の帰り道、公園でのファーストキス。

バイトでお金を貯めてプレゼントした初めての4℃のシルバーリング。

喧嘩では何度泣かせてしまったかわかりません。

最後に会った彼女は、美しく垢抜けていた

東京での楽しい生活を嬉々として話す希は可愛かったけど、素直に喜べない僕もいました。そして、最後に会った彼女は、25歳の美しく垢抜けた女でした。

大人になったことで得られるものはとても大きいです。

稼いだ金で好きな物を食べて、好きなだけ飲んで、もちろん、そんなに贅沢しなければ、旅行だって行ける。世界は圧倒的に広くなって自由になりました。

けれど、その反面、もう戻れない場所と手放したものが、一つ、また一つと増えていくのです。ステージが移行するということは、一つの選択肢と引き換えに、その他の選択肢を捨てるということなんだなと最近痛感しています。

回りくどいことを言って申し訳ないです。

僕、結婚したんです。

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