10兆円の円売り介入でも円高は止まらない

なぜこれからも円高が進むと言い切れるのか

「この数年、アベノミクスによって多額の資金が海外にシフトした。GPIF(年金積立金管理独立行政法人)だけで約30兆円のシフトだ。日本全体では、GDPの20%近く、つまり100兆円に近い資金が海外への投資に回ったという指摘もある。これだけ巨額の資金が、円売りのポジションで捕まっており、すでに日本の経常収支は大幅な黒字に転じている。このような状況下でもし10兆円程度の円売り介入が行われたとしても、効果はほとんど期待できないだろう」。

100兆円も外貨を買った後だけに、この先、さらに円を売りにいく勢力が日本国内に見当たらない。今後予想される円売り介入や、マイナス金利幅拡大も、円売りの決定打にはならないと、志摩氏は言う。

当然、円安に限界があるとすれば、気になるのは日本企業の業績だ。日本企業の想定為替レートは、1ドル=118円前後と見られる。2015年度の途中まで日本企業の業績が好調だったのは、円安による大きな追い風があったからだ。その円安が今後は期待できないとなれば、少なくとも為替要因による業績の底上げ効果は得られなくなる。

アベノミクス相場が終焉を迎える時

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一方、原油価格の下落については、「日本企業にとって決してマイナスではなかった。事実、10兆円程度の経済効果があったと考えられている」という。

それなのに、「実体経済にそれが反映された感がない。確かにガソリン価格は下がったが、たとえば社員の賃金が増えるなど、原油価格下落の恩恵が目に見える形で、より大勢の人たちの経済活動を活性化させる動きまでにはつながっていない。本来、得られるはずの経済効果が、大勢の人たちに配分されず、もっぱら企業によって抱え込まれている」。

企業が必要以上に内部留保を貯め込んだ結果、個人消費は一向に活発化せず、そうこうしているうちに進んだ円高によって、日本企業の業績そのものに黄信号が灯り始めた。中国経済のスローダウンを源流にしたリスクオフと円高が一段と進むとき、2012年冬から始まった「アベノミクス相場」は、終焉を迎えそうだ。

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