デブン・シャーマ スタンダード&プアーズ社長--格付けの独立性を強化、規制は国際的調和が重要
金融危機を受けて、信用格付け会社に対する投資家の信頼は大きく揺らいだ。本来ハイリスクのサブプライムローン関連の金融商品に高格付けを与え、その後の市場崩落を受けて急激に格下げするなど、市場混乱の一因と言われた。
投資家への影響の大きさを鑑み、格付け会社に対する規制強化の動きが主要各国で高まっている。すでに米国は登録制導入など先行して強化。日欧も追随の方向にある。米大手格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)米国本社のデブン・シャーマ社長に、規制強化や自己改革の取り組みについて聞いた。
--今回の金融危機において、格付け会社の責任が問われている。
2005年から07年にかけて、米住宅ローン関連証券化商品などの格付けが市場に失望感を与えたことは認めざるをえない。市場の下落がかつてないほど急だったとはいえ、格付けに際して格付け会社各社が用いた想定の多くが有効でなかったことは明らかだ。
われわれは今回の経験から学び、市場の信認を取り戻すために格付けの質や透明性、ガバナンスの向上などの改革に取り組んでいる。一部の投資家は格付けを「投資推奨」と誤解しているため、格付けは「意見」ということも含め、格付けについての投資家教育にも注力している。
--米国では07年に「信用格付け会社改革法」が施行、08年には証券取引委員会(SEC)が規制を強化したが、どう変わったのか。
たくさんの新しいルールや手続きが導入された。たとえば、分析的業務と商業的業務を完全に分離すること。従来からやってきてはいるが、より厳格な運用が求められるようになった。それから情報公開の充実や、格付けに影響を及ぼす事項に関して助言を行うことの禁止などだ。
格付け会社が登録制となったことで、監督当局の検査も行われる。SECの検査官が立ち入り検査を行い、社内体制に報告と違う不備や不正があれば、罰金や「登録格付け機関(NRSRO)」の資格取り消しなどの行政処分が下される。アカウンタビリティ(説明責任)がより重視されるということだ。