「民主主義」ではなく「防衛」選んだ米国の覚悟--ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授

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 リンカーン大統領は南北戦争のときに人身保護の権利(拘留者が裁判所で拘留に異議を唱える権利)の適用を中断したし、ルーズベルト大統領は第2次世界大戦の初期に日系アメリカ人を強制収容所に収用した。

ブッシュ政権の責任者は、9・11テロ事件後に炭疸菌攻撃や核物質による攻撃が差し迫っているという報告や、2度目のテロの攻撃があるという情報を引き合いに出して行動の正当化を図った。そうした状況の下でリベラルな民主主義と安全保障は揺らぐことがある。

テロは劇場型の行為である。甚大な破壊をもたらすことではなく、市民に対する残酷な行為をドラマ化することで効果を発揮するのである。テロは柔道のようなものである。弱い敵は、強い相手の力を利用することで勝つのである。

テロリストは、人々がリベラルな民主主義を自ら損なうことで恐怖と不安の状況を作り出すことを望んでいる。アメリカがリベラルな民主主義を維持し、支援しようとするなら、テロ攻撃を阻止する一方で、過去の過ちを理解し、繰り返さないことである。それは現在、オバマ政権が行っている議論である。

Joseph S.Nye,Jr.
1937年生まれ。64年、ハーバード大学大学院博士課程修了。政治学博士。カーター政権国務次官代理、クリントン政権国防次官補を歴任。ハーバード大学ケネディ行政大学院学長などを経て、現在同大学特別功労教授。『ソフト・パワー』など著書多数。

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