FX業界が戦々恐々 規制強化の波紋
個人投資家に広がる外国為替証拠金取引(FX)。金融庁が4月下旬に打ち出したFX規制強化策の行方をめぐって、業界や投資家の間に動揺が広がっている。
公表された規制強化策の骨子は、(1)FX会社が顧客から預かった証拠金の区分管理を信託銀行への金銭信託(信託保全)に一本化、(2)取引時の為替差損が一定額以上に膨らんだ際に取引を中止させる「ロスカットルール」の整備・順守をFX会社に義務づける、というもの。
だが今、業界で最も関心を集めているのは、規制案そのものではなく、併記された証拠金倍率、いわゆる「レバレッジ」に対する上限規制導入である。
レバレッジ600倍 金融庁が「待った」
FX取引の大きな特徴は、元手が少なくても多額の利益を上げられる点にある。FX業者に預けた「証拠金」に対し、何倍もの取引ができるという仕組みのおかげだ。
たとえば、証拠金1万円を預けて「レバレッジ」が100倍の売買を行うと、100万円分の取引が可能になる。1ドル=100円の水準で円売りドル買い注文をすれば、1万ドルの買い持ちとなる。その後、101円になったときに反対売買を行い円を買い戻すと、手に入る金額は101万円で、差し引き1万円の儲け。1円の円安ドル高に動くだけで元手は2倍に膨らむが、逆に1円円高に振れると元手が全額吹き飛ぶ。
レバレッジを高めればそれだけ「ハイリスク・ハイリターン」の度合いも増す。こうした商品性は「宝くじを買うような感覚」(埼玉県在住の40代男性)ともいわれ、短期的な為替差益を狙う投資家のニーズにもマッチして人気化。近年、取引量は拡大の一途をたどり事業者数も100社を超し、顧客獲得のために一部FX会社の間ではレバレッジ引き上げ競争が激化していった。