しのびよる破局 辺見庸著
破局下の思考と行動はどうあるべきかについて、「いまは、どんな時代か」「私たちはどうして生きているか」という基本的な視点から著述する。
ここでの「破局」とは、「資本主義経済のそれだけではなく、……深まる一方の荒(すさ)みの状態をもいう」。そして、その状態をウイルスの感染爆発を表す「パンデミック」という言葉でとらえ、米国人が9・11のときに口にしたパンデモニアム(修羅場。ミルトン『失楽園』の地獄の首都)を連想させるとも言う。
この背景に「とりわけ近代以降うたがってこなかった、人間の諸価値」「もっといえば生きていく意味」もいまや揺さぶられているという認識が著者にある。
著者は『もの食う人びと』をはじめ多数の著作において、ネガティブで悲観的な現実を訴えてきたが、本書では「〈資本主義はすばらしいのに、同時になぜこうも益体(やくたい)もないのか〉の謎」が明らかにされる可能性に光明を見出そうとしている。
大月書店 1365円
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