三菱東京UFJ、フィリピン950億円出資の勝算 8割のプレミアムは高くないのか?
「ずいぶん高かったね」
1月14日、三菱東京UFJ銀行がフィリピンの7番手銀行セキュリティバンクに約950億円の出資を行うと発表。これを受けてライバルのメガバンク首脳がつぶやいた言葉だ。
三菱東京UFJ銀は、セキュリティバンクが実施する第三者割当増資を引き受け、発行済み株式の約20%を取得する。既存の筆頭株主Dyグループに次ぐ第2位株主となり、持分法適用会社とする予定だ。
出資額は割高との外部の見方も
出資総額は普通株式と優先株式をあわせ約369億フィリピンペソ(約950億円)。普通株式の取得価額は1株当たり245フィリピンペソ。1月13日の株価は135フィリピンペソだったので、8割強ものプレミアムを付けたことになる。
このプレミアムについて、高値づかみではないか、というのがライバル行の見立てだ。証券アナリストの中にも、「出資額はやや割高だと思う。将来、減損を迫られることになるのではないか」と指摘する声が上がっている。
というのも、新興国の通貨や株価は、昨年央以降、下落基調が続いている。中国経済の減速、米国の政策金利引き上げ、原油価格の低迷という、新興国に関するトリプルデメリットがあるからだ。このため、メガバンクの1つ、三井住友フィナンシャルグループは2015年4~9月中間期決算で、インドネシアの年金貯蓄銀行BTPNに対する出資で550億円の減損を余儀なくされた。出資額約1550億円の3分の1に及ぶ大減損だ。
セキュリティバンクについても同様のことが起きるかどうかはわからない。しかし今年も新興国の通貨安・株安懸念は強い。セキュリティバンクの株価が取得価額の半値である122.5フィリピンペソを下回るほどに下落すると、減損を迫られる可能性もある。昨年の最安値は8月24日につけた120フィリピンペソだった。
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